抄録
北上山地北部における牛の生産育成地域が,酪農の導入によって古い生産関係を排除し,山地酪農地域に変貌した例として,葛巻町を取り上げ,農業経営的条件と生産関係の側面から,土地利用,土地所有,及び酪農民と乳業資本とを結合する生乳供給組合について史的に考察した.その結果,当地域の山地酪農地域の形成過程は5期に分けられた.
当地域に酪農が導入されるまでの過程は3期に分けられた.即ち,駄載牛の生産育成期,役肉牛の生産育成期,乳牛の生産育成期である.これらの犢生産育成期を支えたのが,幾多の放牧地であった.酪農は第I期の隣村に大手乳業資本が進出すると同時に開始され,第II期には当地域の酪農地域の基盤が確立された.戦後の農地改革により酪農は広く普及した.昭和30年,集約酪農地域の指定を受け,その後の乳価闘争を契機に集乳地盤の統合と改変が行なわれ,酪農地域はさらに公共育成牧場との地域間分業の下に充実せる新段階を迎えている.