地理学評論
Online ISSN : 2185-1719
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
ユーゴスラヴィアのアドリア海沿岸の植生
吉野 みどり
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 47 巻 3 号 p. 165-180

詳細
抄録
リエカからドブロフニクに至るアドリア海沿岸と五つの島において,植生の現況と局地風ボラとの関係を考察した.この地域は地中海植生の常緑硬葉樹林と落葉広葉樹林を極相にもつ.垂直分布では海側が地中海型,内陸側が大陸型の植生である.ノヴィヴィノドルスキー付近から,オブロバツ付近までの沿岸斜面では,海抜500mまで植生の破壊が最もいちじるしく,荒原状を呈する.常緑カシ林はラブ島に残存し,その退行遷移型であるマキーやガリークは,ザダル以南の沿岸と島にみられた.島のボラに面する斜面では荒原となり,風下斜面には,林地や常緑植生が分布し,極めて対照的である.植生の疎密度をみると,植生が疎の地域はセー二北方からザダル北方までの沿岸と島の一部に出現し,偏形樹の偏形度の分布図とよく一致する.ボラ地域の植生が疎であることは,ボラのために山が禿げるのではなく,人為によって,一度,原植生が破壊された後は,強いボラのため植被の回復が極めておくれ,山羊・羊の過放牧や燃料採取など現地の土地利用が回復を一層妨げているためである.
著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top