地理学評論
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大分平野の地形発達と地殻変動
千田 昇
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1974 年 47 巻 3 号 p. 181-194

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抄録
中部九州は中央構造線の西端部に位置し,地質・地形構造上の重要性が強調されてきた.大分平野はその東部にあり,段丘地形の発達がよく,段丘面の変位・変形から新期地殻変動の様式を知ることが可能な地域である.このため本地域の段丘面を詳細に吟味し,地形発達を考慮したうえ,地殻変動について考察し,その地域的特性を明らかにした.
段丘面は高位よりI~VIIの7面にわけられ,これらは南関東の屏風ケ浦層に対比される大在層以後の堆積物からなる.海面上昇に対応して形成された段丘面は皿面 (58m~70m) とV面 (17m~41m) で,後者はその高度・連続性から最終間氷期に形成されたと思われる. IV面はその北端部で海域の影響が認められる.I・II・VI・VII面は河成の段丘面で,とくにVII面は河川沿いの勾配が最大であること,沖積面下に埋没することから最終氷期に形成された段丘面である. III・IV・V面の現海岸線沿いの高度分布をみると,大在付近で最も高く,それより東方へは徐々に高度を減ずる.西方へは大野川をはさんで高度が急変し,西に高く東に低い分布を示す.このことは南北性の大野川断層が活断層であることを支持するとともにその東西の地塊が傾動していることを示している.鶴崎台地のIV面を変位させる横尾断層は大野川断層に平行し,かつ運動様式も同様なことから,大野川断層の活動にともなう副次的な断層の可能性が強い.中央構造線方向の断層には,新期の大きな運動は認められない.
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