地理学評論
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伊豆半島東方沖群発地震 (1980年)による熱海観測井の水位変動について
田口 雄作永井 茂
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1982 年 55 巻 4 号 p. 239-257

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抄録

静岡県熱海市に設置した深さ80mの観測井において, 1980年6月下旬から約3か月間にわたって発生した,いわゆる伊豆半島東方沖群発地震に対応する水位変動を観測した.なかでも, 6月29日16時20分に発生したM=6.7の主震で,本井の水位は, coseismicに約80cm低下した.低下した水位は,もとのレベルに復帰するまでに1年2か月の時間を要した.得られた水位記録をもとに,地震との対応を求めたところ,地下水位低下量は,地震のエネルギーの大きさに対応し,地震後の時間の経過につれて減少することが判明した.本井の地下水は自由地下水的な性状を示しており,初川の河川水によって伏没かん養されている.したがって,水位変動に与える影響は,降水がもっとも大きく,気圧との対応は顕著でない.このような水文学的性状は,主震の発生前後でほとんど差異は認められない.これらの現象を考慮して,地震による地下水位変動のメカニズムに関するモデルを提案する.

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