抄録
日本における近代地理学の発達史の中で,写真技術とその発達は,地理学の研究と大きなかかわりがあるといえる.このことは,近代地理教育史においてもほぼ同様である.それにもかかわらず,従来,両者の関連についての体系的な研究は乏しく,とりわけ地理学的観点に立って撮影され,あるいは利用されてきた「地理写真」に関する考察は少ない.その上,地理学界における写真の評価も必ずしも高いとはいえない。
地理学においては,「言語的方法」と同様,地理写真は地図とともに,思想の重要な表出形態をなしているとみることができる.本研究は,このような地理写真について,わが国における地理学史をふまえ・その概念の形成過程を明らかにするとともに,主たる対象や利用形態の変化について,地理学の諸文献や「地理学評論」に掲載された論文を資料として分析したものである.
この結果, 1. 写真界の動向との関連も考慮しつつ,日本の地理写真史を4期に区分しうること, 2. 写真利用が景観論の隆盛と後退を反映していること, 3. 写真利用の普及は, 1930年代の郷土地理教育の隆盛と密接な関連があること,などを指摘しうる.