地理学評論 Ser. A
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秩父地方における下請構造の形成—織物業の衰退と機械工業の展開—
田村 均
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1985 年 58 巻 4 号 p. 216-236

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抄録

秩父織物業の衰退は,機械工業とくに下請工業の展開によって促進され,大企業主導による垂直的・専属的な下請構造の形成を一つの重要な背景としている.本稿では,この点に着目しながら,埼玉県秩父地方で最大の生産規模と組織をもつキャノン系A社の下請関係を取り上げ,専属的な関係を基軸に,機械工業の垂直的な下請構造がいかにして形成されてきたかについて考察し,その地域的編成と機能を明らかにした.
1960年代の後半以降,秩父地方では急速な産業交替,すなわち在来織物業の衰退と機械エ業の展開が,織物業者の業種転換による後者への下請従属化をともなって,ドラスティックなかたちで進展した.機械工業による在来織物業の地域的再編は,前者による若年男子を中心とする,織物業とは相対的に異なる労働力編成を通じて,当地方工業の賃金体系が改編される過程であった.この過程で拡大再編された低賃金は,秩父地方の他地域との賃金格差を拡大し,機械工業の下請構造を支えることになった.そこでは,A社による厳しい外注・下請管理が展開されるが,低賃金基盤の上に専属的下請企業層として育成・拡充された小零細企業群と,これを補強するべく同社の「衛星エ場」として編成された生産子会社・系列会社とが,工場群編成のうえで一定の空間的秩序をもって地域内に「合理的」に配置され,機械エ業の下方への負担転嫁を地域的に支えている.

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