医学検査
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原著
原発性肺癌手術例におけるCD10の発現性と患者予後に関する検討
山口 直則松居 由香岩﨑 雅井伊 庸弘岸本 光夫
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2021 年 70 巻 3 号 p. 385-393

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抄録

CD10の発現は一部の固形癌において予後関連因子や危険因子として位置付けられているが,原発性肺癌に関する報告は少ない。今回,原発性肺癌手術例388腫瘍におけるCD10発現の有無,割合,パターンを検討し,患者の予後予測が可能であるか検証した。免疫組織化学染色の結果,CD10は全体の31%に陽性を示し,組織型別陽性率は腺癌が23%,扁平上皮癌が48%,その他の肺癌が69%で順に増す傾向であった。主たる発現パターンは腺癌がApical Membrane,扁平上皮癌とその他の肺癌では Membrane & Cytoplasm を示した。また患者の年齢,性別,術式,組織型分類,T因子,N因子,病理組織学的分化度分類,胸膜浸潤,リンパ管浸潤,血管浸潤,EGFR遺伝子変異の11因子について各因子をロジスティック回帰分析で単変量・多変量解析し,累積生存率と比較検討したところ,単変量解析では年齢を除く,10因子が関連因子であり,多変量解析ではN因子,胸膜浸潤,EGFR遺伝子変異の3因子が独立した関連因子であった。さらにCD10陽性群では有意に5年生存率が不良であったことからCD10の発現は原発性肺癌の予後関連因子や危険因子と考えられ,予後予測を含めた患者の選別がある程度可能であった。今後は利便性や有用性の高い一つのバイオマーカーとして利用することが期待できると考えられた。

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© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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