地理学評論 Ser. A
Online ISSN : 2185-1735
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
北アルプス南西部,打込谷の氷河地形と氷河前進期
長谷川 裕彦
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 65 巻 4 号 p. 320-338

詳細
抄録

北アルプス南西部,笠ヶ岳北面の打込谷において,最終氷期後半の亜氷期のモレーンと姶良Tn火山灰 (AT) の層位関係,および同地域の氷河地形発達史を明らかにした.氷河地形,とくにモレーンの分布から,打込谷における氷河前進期は古い方から順に一ノ沢期・二俣期・右俣期・北圏谷期の4期に区分される,一ノ沢期のラテラルモレーン上および二俣期のメディアルモレーン・グランドモレーン上からATが発見された.二俣期は,ATがティルの直上に堆積していることからAT降灰直前と考えられ,白馬岳松川北股入の赤倉沢期 (25,000y. B. P.) に対比される.同時に,二俣期のグランドモレーン上でのATの分布から, AT降灰時には氷河がかなり縮小していたことが明らかとなった.氷河地形の開析の程度から,一ノ沢期は最終氷期前半の亜氷期に,二俣期・右俣期・北圏谷期は後半の亜氷期にそれぞれ対比される.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top