地理学評論 Ser. A
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塩尻市洗馬地区における婦人・高齢者による野菜生産
坂本 英夫
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1992 年 65 巻 8 号 p. 603-618

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抄録
多品目野菜産地である塩尻市洗馬地区では,レタスやキャベツなどは2ha以上の専業農家が生産し,パセリ・小ピーマン・チンゲンサイなどの小物野菜は婦人や高齢者が生産する.後者については,1962年,地区の元町集落で主婦達が「元町営農グループ」を結成し,パセリの栽培を始めたのがきっかけである.このグループは,農協による熱心な指導によって,近所で仲良しの主婦達が発起人・推進役となり,夫や姑など家族の協力も得て成功した.定年退職後の男子は年金収入もあり,営農に積極的でない者もいる!家計支出のかさむ40歳代の主婦層は農業に積極的となるが,近年は農外就業も増えている.しかし,近年,連作障害により,パセリの品質が低下している.土地の適度な利用は産地の寿命を延ばすが,規模の零細性が壁となっている.産地の維持のためには,農家の生産意欲の持続と相互の過度な競争心の抑制とのバランスが求められる.
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