宝石学会(日本)講演会要旨
平成16年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 3
会議情報

ダイヤモンド単結晶のマイクロ波CVD法による高速成長
*茶谷原 昭義杢野 由明堀野 裕治藤森 直治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ダイヤモンド半導体デバイス用ウェハーの開発を目的として気相法(CVD)による大型単結晶ダイヤモンドの合成について研究している。半導体として利用する材料には、特に均一性が要求されるので、合成ダイヤモンドを使用する必要がある。これまで合成ダイヤといえば高温高圧(HTHP)条件下で合成されるものを指していたが、近年、減圧下で気相から合成されるCVDダイヤモンドの高速合成が報告され注目されている。HTHPダイヤモンドは1cm程度の結晶が作製可能であるが、それ以上の大きさに成長させるためには、さらに巨大な高圧装置が必要とされる。それに対して、CVDは、反応容器の大型化が容易であるため、今後大型ダイヤモンド合成方法として発展することが予想される。現時点で報告されている最大のCVDダイヤモンドはYan氏らによるダイヤモンドアンビルである[1-2]。また、APOLLO diamond社では、板状CVDダイヤモンドなどを試作している。
 ダイヤモンド結晶合成において、結晶性・純度などの品質はもちろん重要であるが、低コスト化するためにまず高速成長が要求される。極低速で成長させたCVDダイヤモンドは半導体としても理想的な特性を示すものが既に合成されている。一般に高速(10μm/時)以上で成長させると、成長丘と呼ばれる異常成長が起こり、ダイヤモンドのCVDによる厚膜成長は近年まで困難だった。これを克服するために主に二つの方法がある。一つは(100)面を(111)面に比べて優先的に成長させる成長条件を維持することによって(100)基板上にエピタキシャル成長させる方法である。もう一つは、窒素添加することによって、成長速度を増大させると同時に、(100)面を平坦に成長させる方法である。前者は、通常の成長速度での合成であるのに対して、後者は100μm/時以上の高速成長が可能であるため製造に適している。ただし、窒素を添加しているためにダイヤモンド中に窒素が取り込まれ、ブラウン色を呈することが欠点である。ただし、このブラウン色は、天然ダイヤモンドでも話題となっているHPHT処理によって無色化することができる。
 我々は、一般的なマイクロ波CVD装置を用いてダイヤモンド単結晶の高速合成実験を行った。種結晶(基板)としてHTHP合成ダイヤ(Ib型)を用い、成長条件は原料ガスとしてメタン及び水素流量をそれぞれ60, 500sccm、真空度160Torr、基板温度1150~1200℃とした。高速に成長させるため基板上にプラズマを集中させるようにMo製の基板ホルダーの形状を工夫した。窒素を0~3sccm添加し、その影響を調べた。
 結果として次のことが判った。1)窒素なしで、50μm/時程度の成長速度が得られた。2)窒素を添加すると、2倍程度高速に成長し、最大で120μm/時の成長速度が得られた。3)窒素を微量添加すると成長表面にステップバンチングが顕著に見られた。4)窒素添加すると異常成長に伴う成長丘の発生が抑制された。特に、最後の効果によって長時間成長が可能となり、最大で約1カラットの単結晶ダイヤモンド合成に成功した。

著者関連情報
© 2004 宝石学会(日本)
前の記事 次の記事
feedback
Top