宝石学会(日本)講演会要旨
平成23年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 8
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一般講演(7):スピネルの合成と原料組成の効果
*勝亦 徹簔輪 俊介岸 裕幸相沢 宏明小室 修二
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抄録

スピネル(MgAl2O4)にチタン(Ti)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)などの遷移金属不純物を1 %程度添加した結晶を育成した。結晶育成の原料は純度99.99 %のMgO、Al2O3および、純度99.9 %のCr2O3、Mn2O3、TiO2を用いた。育成には光加熱式の浮遊帯域溶融法(Floating Zone; FZ法)を使用し、アルゴン(Ar)を雰囲気ガスとして結晶育成速度4 mm/hで結晶を育成した。スピネルは、MgとAlの組成比が大きく変化する固溶体結晶であることが知られている。そこで、今回は、MgOとAl2O3の組成比(MgO/Al2O3)を0.5~1.5の範囲で変えた原料を用いて、MgO/Al2O3=1の化学量論組成、MgO/Al2O3<1のMg不足組成、MgO/Al2O3>1のMg過剰組成の結晶を育成し、結晶品質へのMgO/Al2O3組成の影響を評価した。結晶品質の評価は、育成したスピネル結晶の発光スペクトル測定および粉末X線回折パターンの測定によって行った。
育成した化学量論組成付近のスピネル結晶は、チタン(Ti) 添加スピネル結晶は青色、マンガン(Mn) 添加スピネル結晶は薄黄緑色、クロム(Cr) 添加スピネル結晶は赤色であった。FZ法による結晶育成は、Mg不足組成の場合が化学両論組成の場合に比べて容易であった。育成した結晶の粉末X線回折パターンから、Mg不足結晶およびMg過剰結晶のどちらも化学量論組成のスピネルに比べて格子定数が減少する(結晶格子が縮む)ことがわかった。蛍光スペクトルへのMg/Al組成の影響は、Cr添加スピネル結晶の場合に特に顕著であった。Mg不足組成で育成したCr添加スピネルでは、結晶は赤色から緑色に変化し、可視光の蛍光強度も著しく低下した。種々の不純物を添加したスピネル結晶の育成結果とMgO/Al2O3組成の影響について報告する。

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