宝石学会(日本)講演会要旨
平成28年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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平成28年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
Herkimer Diamond で代表される両錐水晶の蛍光性
*荻原 成騎
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p. 9-

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抄録

ミネラライトを用いて、世界各地の両錐 水晶の蛍光性を確認した。一部試料につい て蛍光特性を測定し、GC/MS 分析により蛍 光起源化合物を特定した。
(1)パキスタン・アフガニスタン産含石油 両錐水晶の蛍光性は、よく知られている。 石油状物質のみならず黒色炭質物を包有する透明度の高い麗しい水晶である。
これに対して、中国四川産水晶(シチェア ンクォーツ)は、包有物としての炭質物が 多く、水晶としての品質は低く、弱い蛍光 性を示す。四川産水晶には、高温水晶と認定される試料が含まれるが、高温水晶にも 蛍光性を示す試料がある。蛍光を示す高温 水晶は、ほとんど知られていない。蛍光起源化合物が高温(573℃以上)で 酸化分解せずに、包有物として取り込まれている可能 性は、驚きである。
このタイプの両錐水晶で最も有名な水晶 は、Herkimer Diamond である。調査を行っている NY 州 Herkimer, Ace of Diamond 鉱 山では、明瞭な蛍光を示す試料の産出は、 ここ 12 年で僅かに 1 個であったという。一 般的な Herkimer Diamond の産状を紹介し、蛍光性を示す試料、母岩である苦灰岩、晶 洞を被覆する炭質物について報告する。
(2)多量の蛍光物質を含むパキスタン・ア フガニスタン産含石油水晶について石油状 物質を抽出し、蛍光分光分析により蛍光の 特徴付けを行い、さらに地球化学的手法で 蛍光物質を分析した。その結果、水晶に包 有される有機物は、CPI 値 1.0 程度の直鎖ア ルカンの存在、hopanoid や suteroid などの 環状バイオマーカーの欠如などで特徴付け られた。蛍光起源物質は種々のアルキルベ ンゼン類であり、通常石油に含まれる蛍光 物質であるPAH(多環芳香族炭化水素)は、 微量であった。
Herkimer Diamond の母岩である苦灰岩の 有機地球化学分析結果は、驚くべきことにパ キスタン・アフガニスタン産含石油水晶の 包有物の分析結果とよく一致した。すなわ ち、Herkimer Diamond の母岩は、アルキルベ ンゼン類で特徴付けられた。
まとめ 蛍光性を示す包有物の有機地球化学 組成は、Herkimer Diamond で代表される clean clear な水晶の起源について、有益な情 報を含んでいる可能性がある。

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