加工キズは、真珠の加工工程で発生、または顕著化するキズを指す。今回、今まで発表してきた真珠の加工キズについて構造観察、加速試験後のサンプル観察結果、そして今後の検討課題をまとめた。
加工キズの確認方法として、強い光を当てるサーチライト法を用いた。
1.構造観察
①スポット
典型的なスポットは1mm程度の白色不透明の斑紋状で中央にひびがある。中央で切断し薄片化した試料を透過型顕微鏡で拡大観察すると、表面から数 10μmに黒いラインの不透過層があり、電子顕微鏡でさらに拡大すると異質層とわれが確認できた。スポットの外輪部に当たる箇所の断面は黒く不透過となっているが、電子顕微鏡では特徴が確認できなかった。
②ひび
面に細かいひびがある試料断面の薄片を観察すると、表面近くから折れ曲がりながら伸びている黒い線が数多く確認できる。ひびは、電子顕微鏡での拡大観察では確認できなかった。
③帯状白濁層
帯状に白色の不透明層がある真珠で、浜揚げ珠でも見られるが、加工工程で顕著化する場合もあり、加工キズに分類されることもある。断面では、不透明層の箇所は真珠層に周期的に異質層やわれが存在している。この異質層等の量により、浜揚げ時には確認できないが、加工で顕著化する真珠があると推定される。
2.加速試験
加速試験は、「JIS C 0027」を参考に、 5℃(冷蔵庫)70℃(恒温槽)に試料を交互に入れて行った。2019年に行った試験では、 30サイクルで加工キズがサーチライト法でやや明瞭になった程度だが、100サイクルでは通常光、目視で観察できるようになった。また、 2009年に分析したひびの試料は、はがれが発生していた。
3.まとめと今後の検討点
加工キズ発生個所は、真珠層内に異質層が確認できる場合が多く、これが発生に大きく影響していると推定できる。異質層は養殖期間中の海況や母貝の状態が影響すると考えられ、その相関も検討していく必要がある。
また、観察方法や加速実験の検討を行い、どの程度の異質層が加工キズ発生に影響するのかなどの検討を進めていく予定。