宝石学会(日本)講演会要旨
2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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2022年度 宝石学会(日本) オンライン講演会発表要旨
シロチョウ真珠の結晶構造とその見え方についての考察
佐藤 昌弘*矢﨑 純子
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キーワード: μ -CT, growth layer junction
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p. 4

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抄録

真珠層は、炭酸カルシウムの結晶が積み重なりで構成されており、表面を拡大すると、指紋のような成長模様が観察できる。しかし、いわゆるハンマーマークと呼ばれる真珠のようにその積み重なり方により、実際の表面とは異なった見え方となる場合がある。

本発表では、 表面に真珠層の“われ”に似た現象が観察できるが μ- CT 観察ではわれが確認できないシロチョウ真珠(図1)が時々見られることから、この現象の分析を行ったので報告する。

真珠層の“われ”は、 温湿度の変化により真珠層の脆弱な箇所に起こるとされる劣化現象である。 “われ”は、 CT で確認できるが、 強い光を当てることで簡易的に確認することができる。 今回の試料真珠は、 “われ”のように強い光を当てると光が濃淡に分かれているように見える。しかし CT で確認すると、表面近くにわれはなかった。

試料真珠の表面拡大観察により、その光の濃淡で分かれるところが、成長模様の境界となっていることがわかった。試料真珠の断面を光学顕微鏡、電子顕微鏡で観察したが、境界部に違いを見つけることはできなかった。

また、シロチョウガイ貝殻にも同様の現象を生じた箇所はあり、表面は波打ったように見えるが、拡大すると成長模様の境界が存在していた。

真珠層自体が半透明であることから結晶の成長方向の違いがこの現象の要因の一つではないかと推定した。

このような現象は、シロチョウ真珠に多い。熱帯地方に生息するシロチョウガイはアコヤガイに比べ貝殻も大きく成長し、真珠層も厚い。分泌量の多さなどが影響するのではないかと考えられる。

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