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最近、 CGL に 1.593 ct のクッション・ミックスカットが施されたルビーのような赤色を呈する石が鑑別依頼で持ち込まれた(図 1)。これらは検査の結果、マスグラバイトであることが分かった。このような鮮やかな赤色を呈するマスグラバイトは我々の知る限り宝石学の文献には記載がなく、これが初めての報告と思われる。
一見した限りではルビーやスピネルを思わせたが、屈折率は 1.715-1.721 で複屈折量は0.006 であった。さらにシャドーエッジの動きと干渉像から一軸性負号であることが確認できた。通常光では紫赤色、異常光では黄赤色の明瞭な多色性が見られた。比重は 3.60 であった。これらからターフェアイトやマスグラバイトの可能性が示唆された。
マスグラバイト (BeMg2Al6O12)は IMA に登録されている正式な鉱物名は Magnesiotaaffeite-6N’ 3S(三方晶系)であるが、 宝石としては伝統的にマスグラバイトと呼ばれており、きわめて希少性が高くコレクターの垂涎の的となっている。マスグラバイトはターフェアイト(BeMg3Al8O16)(IMAの登録は Magnesiotaaffeite-2N’2S、六方晶系)とほぼ重複する 特性値と 類似する化学組成を有するため、その鑑別は従来より課題になっていた。鉱物の同定には伝統的にX線粉末回折分析が利用されているが、宝石では非破壊で行える蛍光X線元素分析、EDXRF を用いた単結晶回折 X 線分析法、ラマン分光法などを用いた複数の先行研究がある(eg. L. Kiefert and K. Schmetzer, 1998) 。本研究では、ラマン分光法と蛍光X線元素分析を用いてこの石がマスグラバイトであると同定できたが、さらに赤外反射スペクトルとフォトルミネッセンス・スペクトル (PL)においてもマスグラバイトであることが確認できた。