抄録
チタンインプラントは特に化学的安定性に優れ、生体内の環境では腐蝕や溶出を起こさないと考えられているが、一部のインプラント周囲の組織からは蛍光X線分析やICP発光分光分析などでチタンが検出されることが報告されている。組織中へのチタンの移行とインプラント埋入の成否の関係は明らかでなく、また組織中のチタンの存在形態についても報告されていない。生体組織中のチタン及びその他の金属元素についての状態分析が困難な理由として、通常これらの金属元素が極めて低濃度であることがあげられる。 そこで本研究では歯科用チタンインプラント近傍から採取されたヒト歯肉組織中でのチタンの化学状態をXAFSにより分析し、インプラントから生体組織へのチタンの移行について検討した。