抄録
二酸化チタン光触媒は,医療分野に応用できると考えられる。たとえば,塗料を壁に塗布したり,人工植物を設置したりすることで病院内のいやな臭いや有害化学物質を除去できるし,病院で使う様々な器具や白衣などの衣類に塗布することもできるだろう。特に病院や高齢者福祉施設の居室や手術室、汚物処理室、トイレのみならず、各家庭などでの老人介護の現場でもアンモニアやトリメチルアミン、硫化水素、アセトアルデヒド、酢酸などの臭いや浮遊細菌などが問題となっている。
このほかに歯科医療分野では様々な応用展開が考えられる。たとえば歯の漂白材は米国などでは盛んに使用されているが,高濃度の過酸化水素水を用いた漂白材が主流で危険を伴うため,安全で無害な漂白材が求められている。そこで光触媒を用いれば安全に歯の漂白が行えるだろう。
また,入れ歯の洗浄材では頑固に付着した歯石やたばこのヤニなどによる汚れを安全にきれいに除去できる洗浄剤の開発が待たれておりアパタイトを被覆した二酸化チタンを用いた洗浄剤は期待される。アパタイトの吸着能は光の有無に関係なく発揮されることから入れ歯のレジン(樹脂)やマウスピース,入れ歯安定材に練りこめば臭いや汚れの付着しにくい入れ歯ができるだろう。他にガムや歯磨き粉に混合することで口臭や歯垢、口の中の汚れを除去しようとアイデアもある。
ここでは,二酸化チタン光触媒による歯の漂白例を紹介する。歯の漂白では二酸化チタンと過酸化水素を複合化することで従来の漂白法に比べて効果的で安全な漂白材を開発することに成功した。さらに可視光に反応するように漂白材を改良することで可視光を利用して安全に歯の漂白が行えるように設計している。