抄録
銀パラジウム銅金合金は, 鋳造のままあるいは熱処理を施してから臨床に供されるが, しばしば破損する例が見られる。これは, 適切な熱処理条件で使用されていないことが主原因として考えられる。そのため, 熱処理組織, すなわちミクロ組織と引張特性および疲労特性等の機械的特性とを関連付けた研究がなされている。また, 口腔内は絶えず腐食環境であるため, 耐食性の評価も行われている。しかし, これまでの報告では, 組成を変化させたときの耐食性を評価した例がほとんどであり, 種々の熱処理によってミクロ組織を制御し, それらミクロ組織が本合金の耐食性に及ぼす影響について報告した例は見あたらない。そこで, 本研究では, 市販の銀パラジウム銅金合金に種々の熱処理を施し, ミクロ組織を制御した試料につき, 人工唾液中および0.9%塩化ナトリウム水溶液中にて耐食性試験を行い, 本合金の腐食特性に及ぼすミクロ組織の影響について検討した。
以上より人工唾液中および0.9%塩化ナトリウム水溶液中におけるアノード分極曲線では, 本合金のミクロ組織の影響は認められない。また, 人工唾液中の方が0.9%塩化ナトリウム水溶液中より腐食反応が起こりにくいと言える。