抄録
我々はこれまで市販の金銀パラジウム合金よりもPd量を少なく、Au量を多くした試作合金の耐食性について、0.1%Na2S溶液への浸漬試験とX線光電子分光(XPS)を用いた表面分析により検討を重ねてきた1)。その結果、AuとPdが多いものほど耐硫化性は良くなるが、合金全体に含まれる貴金属元素の割合だけでは決定づけられないことが示唆された。すなわち、鋳造時の表層部の偏析が腐食に影響することが考えられた。そこで本研究では、金銀パラジウム合金鋳造体について、鋳造のまま、表面酸洗い後および溶体化処理後の表層部の元素濃度分布の変化を調べた。
以上の結果から、金銀パラジウム合金の鋳造体表面は鋳造時の酸化により非貴金属成分が消失した。その後の溶体化処理によって合金組成は均質化傾向を示すことが確認された。しかし、Cuは容易に酸化されるため、金属表層のかなり深い層までCu濃度の減少がみられた。これに代わってAgが濃化した。このことは金銀パラジウム合金はバルクの組成だけでなく、表面の組成によっては耐食性に違いが生じるものと考えられた。