抄録
内分泌撹乱作用があるとされるビスフェノールA(BPA)が歯科材料にも含まれている可能性が指摘され, 歯科界で問題となった. BPAを原料とするポリカーボネート(PC)は, 暫間被覆冠, 義歯床, 矯正用ブラケットなどに用いられており, それらからのBPAの溶出も報告されている. 我々も, PC製プラケットを水中浸漬することにより, BPAが溶出することおよびPCが加水分解を受けてBPAが増加すること, 口腔内でも実際にプラケット中のBPAが増加すること, さらに, このようなBPAの増加にはフィラーが関与している可能性も報告してきた1). 今回は, PC製歯科材料である暫間被覆冠, 義歯床プレート, 矯正用ブラケットを用い, 37℃の約3年にわたる長期水中浸漬によるBPAの生成とその溶出挙動および分子量変化を調べた.
以上の結果から、ポリカーボネート製歯科用材料を長期水中浸漬した場合, 3種の試料間でBPAの生成, 溶出に関してかなりの違いが認められ, BPAの溶出はブラケットにおいて, それらが最も顕著であった. 逆に, 暫間被覆冠ではBPA生成がかなり抑制され, 溶出も少なかった. これらの現象にはPCに添加されている物質が影響を与えているものと考えられた.