抄録
歯科材料からの環境ホルモン様物質の流出に関して多くの研究者によって指摘され, 種々の研究がなされている. 義歯粘膜調整材の液成分にはフタル酸エステル類が含まれ, 徐々に口腔内に流出している事が多くの文献で指摘されており, フタル酸エステル以外の物質を使用する粘膜調整材も検討されている. 義歯粘膜調整材は比較的高齢者に使用することが多く, 内分泌撹乱作用も比較的影響は少ないとも考えられる. 一方, インレーなどの修復治療の暫間被覆材は治療の性格上, 主に若年者層を中心に使用されることが多く, その影響には注意が必要である. 本研究はインレー窩洞の仮封材として多用されるデュラシールや義歯粘膜調整材からのフタル酸エステル類を確認し, その流出挙動を知るために液と粉を混合後, 数秒から数十秒間放置した後に蒸留水および人工唾液に接した場合, 流出量にどのような経時変化が生じるかを中心に検討した.
筆積み法にて口腔内に直接持ち込まれるデュラシールに関しては, 患部に貼薬した直後の唾液との接触を避け, 30秒程度開口状態に保ちポリマーのフタル酸エステル類による膨潤効果がある程度進んだ後に唾液と接触させることにより, その流出量は低く抑えられることが明らかとなった.