抄録
象牙質に対する接着では, 接着剤成分とコラーゲンの相互作用が重要である. コラーゲン固有の変性温度や構造転移熱はその環境によって変化することが予想される. そこで, 示差走査熱量分析法(differential scanning calorimetry: DSC)によりHEMAなどの接着性モノマー成分との相互作用がコラーゲンの熱物性に与える影響を調べ, コラーゲンの熱変性温度(Td)がHEMA濃度に依存して特徴的な変化を示すことを第33回日本歯科理工学会学術講演会で報告した. さらに、第35回同講演会ではHEMAと構造的に関連のある同族体のアルコールにより, コラーゲンの構造安定性に及ぼすアルコール構造の影響を報告した. 今回は, これらの経緯を踏まえ, 市販されている象牙質処理剤にしばしば用いられている, 塩化鉄(III)を主成分に含むGC Fuji Luting CONDITIONERがコラーゲンの熱安定性にどの様に影響するのかを検討した.
これらのことから, プライマーなどの象牙質表面処理剤に含まれるHEMA, 塩化鉄(III)の濃度に依存したコラーゲンの熱変性温度が, 象牙質接着強度に密接に関連していることが考えられる.