肺癌
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原著
無症候性脳転移を有する非小細胞肺癌に対する化学療法の有効性の検討
平野 聡竹田 雄一郎泉 信有小林 信之工藤 宏一郎
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ジャーナル オープンアクセス

2006 年 46 巻 2 号 p. 111-116

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抄録

目的.従来,脳転移に対する化学療法は治療効果が乏しく,放射線療法や手術療法が標準治療とされてきた.一方,MRIによる微小脳転移の発見の増加や新規抗癌剤の開発に伴い,脳転移症例に対する化学療法の有効性が期待される.今回我々は,無症候性脳転移を有する非小細胞肺癌に対する化学療法の治療効果を評価した.方法.1998年4月から2004年12月までに当院で初回化学療法として2コース以上の治療を受け,全身,および脳病変の治療効果判定が可能であった無症候性脳転移を有する非小細胞肺癌症例19例を対象として,化学療法単独による脳転移巣,全身病変に対する効果について検討した.また,予後,最終死因についても解析した.結果.脳病変を除く全身での効果判定ではPR 3例,SD 11例,PD 5例であった.脳病変については改善2例,不変14例,悪化3例であった.治療中に脳転移による症状が出現したものはなかった.最終死因が脳転移によると考えられるものは3例で,いずれも癌性髄膜炎を伴っていた.生存期間中央値は10ヶ月であった.結論.無症候性脳転移を有する非小細胞肺癌症例においては全身化学療法が脳局所にも一定の効果を有すると考えられ,初回の治療として化学療法が第一選択となる可能性が示唆された.

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© 2006 日本肺癌学会
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