2006 年 46 巻 2 号 p. 117-125
背景.肺癌の骨格筋転移は極めて稀とされているが,今回我々は,初診時もしくは経過中に骨格筋転移を来した非小細胞肺癌の3症例を経験した.症例.症例1は46歳男性,肺腺癌の外側翼突筋転移のために開口障害を来した.放射線及び化学療法に対して抵抗性であり,原疾患の悪化により症状発現から約9ヶ月の経過で死亡した.症例2は57歳男性,肺大細胞癌もしくは低分化腺癌の症例で右大腿部の筋転移に加え,他臓器への広範な転移を認めた.治療抵抗性で症状出現より約7ヶ月の経過で死亡した.症例3は64歳男性,腺癌の症例で,右上腕二頭筋に転移を来し,治療抵抗性の経過で筋転移出現より約3ヶ月で死亡した.結論.骨格筋の腫瘤性病変の診断の際には転移性悪性腫瘍,特に肺癌の骨格筋転移を念頭に置き,全身精査と病変部位の生検により速やかな確定診断が必要と考えられた.