肺癌
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症例
肺癌の副腎転移術後の局所再発に対しUracil-Tegafur(UFT)が著効した1症例
阿部 典文山田 典子石原 照夫小檜山 律
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キーワード: 副腎転移, 肺癌, 化学療法, UFT
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2006 年 46 巻 2 号 p. 161-165

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抄録

背景.副腎が肺癌転移の好発臓器であることはよく知られており,近年,画像診断の進歩と相まって単発副腎転移に対する切除後の長期生存例の報告も散見される.しかし,術後の局所再発に対する有効な治療法はないのが現状である.今回,不完全な副腎転移切除後の局所再増殖病変がUracil-Tegafur(UFT)の投与により消失し,術後3年6ヶ月無再発生存している症例を経験したので報告する.症例.71歳の男性.原発性肺癌(腺癌)に対し,左下葉切除術・ND2aを施行した.病理病期はpT2N0M0 Stage IBであった.切除後11ヶ月目の腹部CTで径65×50 mm大の右副腎腫瘍が指摘され,右副腎摘出術を施行したが,肝への直接浸潤を認め,肉眼的・組織学的ともに切除断端陽性であった.病理学的に肺癌の副腎転移と診断された.右副腎摘除3ヶ月後のCTで副腎切除断端部の残存腫瘍の再増殖が指摘され,術後5ヶ月には更なる増大傾向と肝への著明な浸潤が認められたため,UFT(300 mg/日)の投与を開始した.同治療開始後,病変は急速に縮小し,投与8ヶ月後のCTで完全に消失した.以後,UFT投与を継続しているが,副腎転移術後3年6ヶ月経過した現在も無再発生存中である.結論.今回の経験から肺癌の副腎転移に対するUFTの有効性が示唆されたので報告する.

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© 2006 日本肺癌学会
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