2006 年 46 巻 2 号 p. 155-159
背景.特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura,以下ITP)は腫瘍随伴症候群として見られることがある.症例.60歳,男性.左上葉原発の扁平上皮癌IIIB期と診断されカルボプラチンとドセタキセルの併用療法を3コースと胸部同時放射線療法を行った.最終抗癌剤投与後28日目に鼻出血を認め,血小板数3,000/μlを指摘された.精査を行ったところ,脳転移と多発肺転移が認められた.また,PA-IgGの上昇が認められ骨髄穿刺所見よりITPの合併と診断した.副腎皮質ステロイド薬による治療を行ったが,効果が得られないまま全身衰弱が進行し死亡された.結論.化学療法後にITPを発症した肺癌の1例を経験した.本症例は増悪と同時期にITPを発症したことから腫瘍随伴症候群によるものが考えられた.