肺癌
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第20回日本肺癌学会肺癌ワークショップ <セッションII>
遺伝子発現解析による非小細胞肺癌のゲフィチニブに対する感受性予測
柿内 聡司矢野 聖二曽根 三郎
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ジャーナル オープンアクセス

2006 年 46 巻 3 号 p. 245-251

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抄録

目的.上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブ(イレッサ®)は再発を来した進行非小細胞肺癌に有効な薬剤であるが,その効果は一部の症例に限られる.EGFRの活性型変異が本薬剤の劇的な抗腫瘍効果と関連するが,stable disease(SD)症例では検出されないことが知られている.SD症例の中には長期生存例が存在することから,complete response/partial response(CR/PR)症例だけでなく長期SD症例をも予測しうるバイオマーカーの同定が急務となっている.そこでわれわれは本薬剤の感受性と相関する分子の同定と,遺伝子発現に基づいた感受性予測システムの構築を目的に以下の検討を行った.方法.ゲフィチニブ治療前に採取した再発非小細胞肺癌生検組織33検体の遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイによって取得し,random permutation testによって感受性群,耐性群で発現の異なる遺伝子を同定した.次にweighted vote法によりこれらの遺伝子の発現パターンに基づいた感受性予測スコアを算出し,leave-one-out cross validationと追加症例によってシステムの正確性を検証した.結果.感受性群と耐性群で発現の異なる51遺伝子を同定し,うち12遺伝子の発現に基づいて感受性を予測するスコアリングシステムを構築した.このシステムによってPR,PD症例全例の感受性が正しく判定された.また,SD症例についてはtime to progression(TTP)が4ヶ月以上の症例は感受性,4ヶ月未満の症例は耐性と判定された.結論.遺伝子の発現パターンによって,ゲフィチニブにより腫瘍の縮小もしくは長期間腫瘍の増大を阻止できる症例とこれらの効果が期待できない症例の予測が可能であることが示唆された.

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© 2006 日本肺癌学会
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