肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
46 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 西 英行, 鷲尾 一浩, 玄馬 顕一, 岸本 卓巳
    2006 年46 巻3 号 p. 195-198
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.悪性胸膜中皮腫(MPM)に対する胸膜肺全摘術(EPP)の妥当性を検討した.対象.1993年より11年間に当院で診断されたMPM 37例のうち手術症例10例を対象とした.結果.10例は全例男性で,平均年齢は61.5歳,組織型は上皮型3例,二相型1例,線維形成型6例であった.International Mesothelioma Interest Group(IMIG)分類によるI期9例,III期1例であった.術後観察期間は1~42ヶ月であり,1例が術後6ヶ月目に特発性心筋症にて,1例が13ヶ月目に腫瘍死した.8例は無再発生存中である.全症例の手術例と非手術例の二年生存率は67.5%,22.5%で有意差を認めた.I期症例では,手術症例の3年生存率は85.7%であった.結語.EPPは症例を選べば,MPMの治療法として評価すべき治療手段と考えられた.
  • 田中 良太, 堀越 浩幸, 中里 宜正, 吉野 麗子, 飯島 美砂, 呉屋 朝幸, 湊 浩一
    2006 年46 巻3 号 p. 199-205
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺野末梢型病変に対してCTによる画像解析のみでは正診率が低く,治療方針を決定するには未だ十分であるとはいえない.我々はさらなる質的診断の向上を目指してMRIを利用している.対象と方法.2005年4月から12月までに当センター呼吸器外科において手術を施行した75症例のうち,術前にMRIを施行した肺野末梢型病変43例を対象とした.疾患の内訳は悪性病変37例(原発性肺癌30例,転移性悪性腫瘍7例),非悪性病変6例である.使用シーケンスはSTIR法,呼吸同期下高b値拡散強調画像(DWI),ダイナミックスタディーである.なおSTIR,およびDWIは4段階にスコア化して視覚的に評価した.結果.良悪の鑑別に関する検討ではDWIで中等度以上の信号(スコア3以上)が悪性病変で81.1%(37例中30例),非悪性病変で33.3%(6例中2例)であり悪性病変において有意に高頻度であった.DWIスコアが3以上,もしくはダイナミックスタディーによるtime-intensity curveで急峻な立ち上がりを示した病変を陽性と判定するとsensitivityが86.5%,specificityが66.7%,accuracyが83.7%であった.偽陰性5例すべてが小型肺腺癌で,病理学的に浸潤傾向の乏しい病期IA期の症例であった.結語.肺野末梢型病変に対する高b値拡散強調画像はNoguchi分類のType AまたはBのような悪性度の低い癌を選別するのに有用であると思われる.
症例
  • 松倉 規, 小阪 真二, 國澤 進, 岡林 孝弘
    2006 年46 巻3 号 p. 207-210
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.慢性膿胸にはさまざまな悪性腫瘍が合併することが報告されている.今回慢性膿胸に対し膿胸郭清術を行ったところ切除した肥厚胸膜に悪性胸膜中皮腫を認めた症例を経験した.症例.72歳男性.主訴は熱発.明らかなアスベスト曝露歴なし.既往歴に結核性胸膜炎あり.10年前まで慢性膿胸で近医に通院していたが熱発が出現し紹介入院した.胸部造影CTでは右胸腔は石灰化した肥厚胸膜に覆われた膿胸内容物で占められ造影剤の膿胸腔内への漏出を認めた.明らかな腫瘤は指摘できなかった.慢性無瘻性膿胸と診断し膿胸郭清,有茎広背筋弁充填,肺剥皮術を行った.膿胸内容物は石灰化した肥厚壁側胸膜に覆われた形で一塊として摘出された.病理学的に壁側胸膜の内腔面には腫瘍は存在せず外側面に大型異型細胞の浸潤を認め悪性胸膜中皮腫と診断された.術後炎症徴候は消失し退院したが癌性胸膜炎で再入院した.全身衰弱が進行し発症から4ヶ月の経過で死亡した.結論.慢性膿胸の診療に際しては胸痛や熱発等の自覚症状が出現した場合には悪性腫瘍の合併を念頭においた精査を行う必要があるが悪性腫瘍合併の場合の予後は不良であった.
  • 横須賀 哲哉, 小林 利子, 中野 絵里子
    2006 年46 巻3 号 p. 211-214
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺原発絨毛癌は極めて稀である.気胸により発見された肺原発絨毛癌を経験したので報告する.症例.42歳,男性.左自然気胸の再発で胸腔鏡下肺部分切除が行われた.切除標本内に腫瘤が認められ,組織学的に絨毛癌と診断された.追加の上大区切除およびリンパ節郭清を行ったが病変は認められず,画像上他臓器には異常なく,肺原発と診断した.予防的補助化学療法(cisplatin,etoposide)2コース行ったが早期に多発肺転移で再発した.TIP療法(paclitaxel,ifosfamide,cisplatin)4コースでCRとなり,以後約12ヶ月経過したが再発を認めていない.結論.本例は極めて早期に発見された肺絨毛癌で,化学療法によって長期生存が得られる可能性がある.
  • 杉野 圭史, 川畑 雅照, 本間 栄, 河野 匡, 元井 紀子, 吉村 邦彦
    2006 年46 巻3 号 p. 215-220
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.細気管支肺胞上皮癌(BAC)様の肺内進展を呈した非常に稀な悪性胸膜中皮腫の1例を経験したので報告する.症例.72歳男性,喫煙歴およびアスベスト曝露歴あり.右胸水で発症し,結核性胸膜炎を疑われ,ドレナージと抗結核薬投与にて一時改善するも1年後に増悪した.胸腔鏡では,壁側胸膜および肺表面に多数の白色調小結節が認められ,生検した胸膜および肺組織では,立方上皮様の腫瘍細胞が肺胞上皮置換性に増殖し,細気管支肺胞上皮癌に類似した病理組織像を呈した.免疫組織化学的染色では,calretinin,HBME-1ならびにcytokeratin5/6などの中皮系マーカーが陽性,TTF-1やCEAなどの肺胞上皮系マーカーが陰性であったため,悪性胸膜中皮腫と診断された.結論.BAC様の肺内進展を呈する悪性胸膜中皮腫は非常に稀であり,診断には免疫組織化学染色が有用であった.
第20回日本肺癌学会肺癌ワークショップ <セッションI>
  • 貫和 敏博, 野口 雅之
    2006 年46 巻3 号 p. 221
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 野村 仁
    2006 年46 巻3 号 p. 223-230
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.各種病型肺癌の診断・治療あるいは予後の予測に有用な分子マーカーを同定する.研究計画(方法).cDNAマイクロアレイを用いて各種病型肺癌,正常肺組織からなる臨床検体,各種病型肺癌に由来する細胞株の遺伝子発現プロファイルを解析する.結果.解析に用いる遺伝子セットから培養細胞あるいは臨床検体全般に固有な遺伝子を除去する事により病型の特質を反映したクラスター分離が可能となった.この処理により小細胞性肺癌と扁平上皮肺癌では病態モデルとして有用な細胞株が選別された.さらに階層クラスタリングにより小細胞性肺癌とLCNECからなる神経内分泌系腫瘍は予後の異なるグループに分類された.予後不良群で高発現の遺伝子に対するsiRNAを用いて細胞増殖やアポトーシス感受性への影響を検討したが,これまでのところ有望な治療標的候補遺伝子の同定には至っていない.結論.予後不良群に選択的な分子標的を見出す為にはさらに多くの候補遺伝子について検討を広げる必要があると考えられた.
  • 柳澤 聖, 高橋 隆
    2006 年46 巻3 号 p. 231-236
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.肺癌は日本の癌死亡の第一位を占め,年間約55000人以上もの生命を奪う.非小細胞肺癌は肺癌全症例の約80~85%を占め,外科的摘出術が施行されるが,5年生存率は50%に満たない.これまでの研究では,術後予後を正確に予測可能な成果は得られていない.近年,急速に進歩しつつあるプロテオミクス解析技術は,生体試料からタンパク発現解析が可能とし,ポストゲノムシーケンス研究の中核として注目され,生命現象や疾患要因の理解の為に応用されてきている.本研究では,ヒト肺癌のタンパク発現プロファイルと臨床病態の関連について解析を行った.方法.MALDI-TOF MSを応用し,150例以上の肺癌手術検体を用いたタンパク発現プロファイル解析を行った.バイオインフォマティクス解析により,臨床病態と関連を認めるピークプロファイルを探索した.結果.総計2600以上のピークを検出し,それらに基づいて腫瘍・正常肺間で有意差を認めるピークプロファイルを検出した.結論.質量分析器を用いた微量の組織試料からのタンパク発現プロファイル解析により,ヒト肺癌の分子病態解明のみならず,革新的な予防・診断・治療法の開発に向けた分子標的の同定にも有用である可能性を示した.
第20回日本肺癌学会肺癌ワークショップ <セッションII>
  • 光冨 徹哉
    2006 年46 巻3 号 p. 237-240
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異とEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の感受性に関する現況をまとめる.方法.本年夏までに発表された論文,学会発表および自験例を中心に上記テーマにつき検討する.結果.EGFR変異は東洋人,女性,非喫煙者,腺癌に頻度が高いこと,およそ90%の変異はエクソン19の欠失変異か,エクソン21のコドン858の点突然変異であること等が明らかにされた.このような変異がある症例に対してEGFR TKIは80%程度奏効し,生存が有意に延長する.最近はEGFR遺伝子増幅の意義についても注目されている.さらに,ゲフィチニブの獲得性の耐性のメカニズムの一つとして第二の変異T790Mが報告された.結論.今後これらの遺伝子情報を用い,いかにゲフィチニブの使用を個別化していくかが急務である.
  • 西尾 和人
    2006 年46 巻3 号 p. 241-244
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    肺癌特異的に検出される変異型EGFRはgain of functionであり,下流シグナルの活性化により,発癌に寄与すると推察される.EGFRに対する高い親和性がTKIに対する高い感受性をもたらすと推測されているが,詳細は不明である.EGFR変異の頻度は,アッセイ系,サンプルに大きく依存するが,EGFR遺伝子変異と,EGFR-TKIの効果,とくに生存率との関連性は明らかでない.正常型EGFRを発現する肺癌症例におけるEGFR-TKIの効果を明らかにすることも今後重要である.
  • 柿内 聡司, 矢野 聖二, 曽根 三郎
    2006 年46 巻3 号 p. 245-251
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブ(イレッサ®)は再発を来した進行非小細胞肺癌に有効な薬剤であるが,その効果は一部の症例に限られる.EGFRの活性型変異が本薬剤の劇的な抗腫瘍効果と関連するが,stable disease(SD)症例では検出されないことが知られている.SD症例の中には長期生存例が存在することから,complete response/partial response(CR/PR)症例だけでなく長期SD症例をも予測しうるバイオマーカーの同定が急務となっている.そこでわれわれは本薬剤の感受性と相関する分子の同定と,遺伝子発現に基づいた感受性予測システムの構築を目的に以下の検討を行った.方法.ゲフィチニブ治療前に採取した再発非小細胞肺癌生検組織33検体の遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイによって取得し,random permutation testによって感受性群,耐性群で発現の異なる遺伝子を同定した.次にweighted vote法によりこれらの遺伝子の発現パターンに基づいた感受性予測スコアを算出し,leave-one-out cross validationと追加症例によってシステムの正確性を検証した.結果.感受性群と耐性群で発現の異なる51遺伝子を同定し,うち12遺伝子の発現に基づいて感受性を予測するスコアリングシステムを構築した.このシステムによってPR,PD症例全例の感受性が正しく判定された.また,SD症例についてはtime to progression(TTP)が4ヶ月以上の症例は感受性,4ヶ月未満の症例は耐性と判定された.結論.遺伝子の発現パターンによって,ゲフィチニブにより腫瘍の縮小もしくは長期間腫瘍の増大を阻止できる症例とこれらの効果が期待できない症例の予測が可能であることが示唆された.
  • 松浦 正明
    2006 年46 巻3 号 p. 253-258
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.抗癌剤に対する副作用関連遺伝子探索のための一塩基多型(SNP)を用いたアソシエーション解析を考察し,統計学的検出力の高い方法を検討する.方法.主要なハプロタイプの数を考慮し,SNP単位での解析手法とハプロタイプ単位での解析手法の比較検討を行う.さらにハプロタイプブロックを考察する事により,ハプロタイプの数とアソシエーション解析における統計学的検出力との関係を調べる.結果.主要なハプロタイプの種類が2種類の場合はSNP単独の解析でも信頼性の高い結果を得られるが,主要なハプロタイプが3種類以上の場合は重要な関連遺伝子を見逃す可能性がある.副作用関連遺伝子の探索のためのアソシエーション解析で検出力を高めるためには,ハプロタイプブロックの適切な同定と,ハプロタイプの論理和モデルの利用が重要である.結論.抗癌剤の治療効果や副作用に関連する遺伝子やマーカーの探索のためのSNPを用いたアソシエーション解析における注意点と統計的検出力の高い解析法を提示した.
第20回日本肺癌学会肺癌ワークショップ <セッションIII>
第20回日本肺癌学会肺癌ワークショップ <セッションIV>
  • 後藤 新, 董 瑞平
    2006 年46 巻3 号 p. 267-275
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    CetuximabはマウスとヒトIgG1のキメラ型モノクローナル抗体であり,ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的としている.CetuximabはヒトEGFRの細胞外領域に結合し,リガンド結合を競合的に阻害する.多くのEGFR陽性腫瘍における異常増殖の惹起や制御にはEGFRを介したシグナル伝達系が関与している.本剤によりその経路を遮断することで腫瘍増殖を抑制し,アポトーシスを誘導することが可能である.種々のin vitro及びin vivo非臨床試験において,本剤単独あるいは化学療法剤との併用投与でcetuximabの抗腫瘍活性が認められている.これまでに世界中でcetuximabを用いた多くの臨床試験が本剤単独あるいは化学療法や放射線療法との併用で実施されており,結腸直腸癌,頭頸部癌,肺癌,膵臓癌,腎癌患者において抗腫瘍効果と安全性が確認されている.Cetuximab投与に関連して最も高頻度で認められる副作用は座瘡様皮疹である.これは臨床的有効性を示す重要なマーカーと考えられ,生存期間延長との間に相関性がみられる.
  • Stefan Frings
    2006 年46 巻3 号 p. 277-281
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    肺癌による死亡は全癌死の約3分の1を占め,乳癌,前立腺癌及び結腸癌による死亡を総合した数よりも多い.肺癌を発症した患者の約85%はその疾患により死亡する.ヒト化抗VEGF MAb(モノクローナル抗体)であるベバシズマブ(bevacizumab; AvastinTM)のこの肺癌における臨床成績を紹介する. 肺癌における化学療法と組合せたベバシズマブの安全性ならびに有効性の最初の検討は,無作為化第II相試験にて検討された.NSCLCを有する99例の患者が,カルボプラチン/パクリタキセル(CP)を3週間毎に6サイクルを投与する群,これに7.5 mg/kgのベバシズマブを3週間毎に併用投与する群,及び15 mg/kgのベバシズマブを3週間毎に併用投与する群,の3治療群に無作為に割付けられた.致死性の出血がベバシズマブの併用群で9%(6/66)の発現頻度で観察され,これらの発現には,ベースラインにおける喀血及び組織学所見,という2つの危険因子が認められた.扁平上皮の組織学所見を有する患者を除いてサブグループ解析を行ったところ,CPとベバシズマブの併用の有効性はより明確になることが示された. ここで注目すべきことは,この無作為化第II相試験では,治療群と対照群では予後に影響を与える主要な背景因子が均衡しておらず,ベバシズマブの至適用量について決定的な結論は得られない点であった. その後米国の共同グループであるECOGは,上述の治験の所見に基づいて,第III相試験,E4599を計画し,カルボプラチン/パクリタキセル(CP)3週間毎の投与×6回と比較して,CP+ベバシズマブ15 mg/kg 3週間毎の投与×6回に次いで疾患進行までベバシズマブを単剤投与する治療の効果を検討した.この試験には878例の患者が登録された(対照群:444例,ベバシズマブ治療群:434例).2回目の中間解析が484番目の死亡例が出た時点で行われた(2005年のASCOで結果公表).ベースラインにおける諸因子は,2治療群間で良く均衡がとれていた.有効性に関しては,ベバシズマブによる治療は奏効率を10.0%から27.2%(p<0.0001)に,無増悪生存期間を4.5から6.4ヶ月(HR 0.62;p<0.0001)に,全生存期間を10.2ヶ月から12.5ヶ月(HR=0.77;p=0.007)に増加した.安全性に関しては,好中球減少症はベバシズマブ併用群においてより高頻度(16.4対24%)に発現したが,血小板減少症,貧血及び発熱性好中球減少症においては有意な差は認められなかった.ベバシズマブの使用に伴って生じると考えられている出血及び高血圧等の典型的な有害事象は,ベバシズマブ併用群においてより一般的にみられた.静脈性及び動脈性血栓症の発現に関しては,2治療群間で差はみられなかった. E4599はNSCLCに関して標準的なプラチナ含有2剤併用に対し生物学的製剤を加えた3剤併用において,「生存期間の延長」を明確に示した最初の第III相比較試験である.ベバシズマブは非扁平上皮NSCLCを有する患者においてカルボプラチン/パクリタキセル化学療法と併用された場合,全生存期間を有意に改善することが確認された.又,ベバシズマブの併用により奏効率及び無増悪生存率が有意に改善された.一方,ベバシズマブは喀血を含む重篤な出血の僅かな増加を伴うことが示された.ベバシズマブ+カルボプラチン/パクリタキセルは今やECOGの進行非扁平上皮NSCLCに対するファーストラインの治療の基準となっている.
  • Haiyi Jiang
    2006 年46 巻3 号 p. 283-288
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    ZD6474は,細胞増殖に関わる二つの重要なシグナル伝達経路に選択的に作用する新規の小分子化合物で,血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)チロシンキナーゼを阻害することで,腫瘍の血管新生を抑制し,あわせて上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼを阻害することで,腫瘍の増殖を直接抑制する.1日1回の経口投与により広範囲の移植ヒト腫瘍モデルに対し優れた増殖抑制効果を示した.本邦および米国/オーストラリアで実施された二つの第I相試験の結果,ZD6474の忍容性は概ね良好であった.主な有害事象として,皮疹,下痢,高血圧,無症候性のQT延長が認められた.また,本邦の第I相試験では,非小細胞肺癌患者9例中4例に奏効例が認められた.ZD6474の第II相試験として,非小細胞肺癌患者および小細胞肺癌患者を対象に,ZD6474単独療法および化学療法剤との併用療法による検討が行われ,非小細胞肺癌患者を対象に実施されたゲフィチニブ(イレッサTM)と比較するZD6474単独療法の第II相試験およびZD6474とドセタキセルの併用療法による第II相試験において,主要評価項目である無増悪生存期間の改善が認められた.
feedback
Top