抄録
背景.Tumor necrosis factor(TNF)阻害薬は,関節リウマチ(RA)をはじめとする慢性炎症性疾患に対して優れた臨床効果を有し,広く使用されている.TNF阻害薬と悪性腫瘍発生との関連については,その頻度を上昇させる可能性が懸念されているものの,一定の見解は得られていない.症例.症例は77歳女性.既喫煙者(23 pack-years).2004年発症のRAに対して,prednisoloneとdisease-modifying antirheumatic drugs(DMARDs)で治療されるも,2009年からTNF阻害薬が追加され治療中であった.2012年5月の胸部CTで右下葉に巨大な腫瘤影を指摘され,精査の結果,小細胞肺癌,臨床病期:cT3N3M1b(OSS,HEP),stage IVと診断された.TNF阻害薬中止後,carboplatin(CBDCA)及びetoposide(ETP)併用による治療を5コース施行した.化学療法は一時的には著効し,治療効果判定はgood PRで,performance statusも改善を認めたが,最終的には血液毒性などの有害事象のため化学療法の継続が困難となり,発症から8か月の経過で死亡の転帰をたどった.結論.TNF阻害薬治療中に発症した小細胞肺癌の1例を経験した.特に喫煙歴や高齢など,癌発生の危険因子を有する場合,TNF阻害薬使用による悪性腫瘍発生の増加が危惧され,慎重な経過観察が必要であると考えられた.