2022 年 62 巻 7 号 p. 1033-1037
背景.抗レトロウイルス治療が導入されhuman immunodeficiency virus(HIV)感染症患者の予後が改善した一方で,非AIDS指標悪性腫瘍が予後に影響するようになってきた.HIV感染合併肺癌は非HIV感染症例と比較し進行が早く,予後不良とされているがHIV感染合併肺癌に関する特異的治療プロトコルは存在しない.症例.55歳,男性.肺腺癌(臨床病期T1aN3M1c)と診断し,また化学療法施行前の血液検査所見でHIV抗体陽性でありHIV感染が判明した.一次治療でプラチナ製剤併用療法を導入するも効果が乏しく,二次治療としてドセタキセルを導入した.投与後骨髄抑制が遷延,全身状態も増悪し化学療法の継続は困難と判断した.その後,心嚢液増悪に伴う心タンポナーデを発症し永眠された.結論.治療抵抗性のHIV感染合併進行肺癌を経験した.HIV感染合併進行肺癌に対する標準化学療法の確立が望まれる.