2024 年 64 巻 1 号 p. 11-16
目的.非小細胞肺癌の周術期治療は個別化に向かい,今後は手術症例でも,次世代シーケンサーを用いたマルチプレックス遺伝子検査が求められる.手術検体からマルチプレックス遺伝子検査を成功させるためには適切な検体処理が重要となる.そこで本研究では,当院の肺手術検体処理方法を検証し,手術検体からマルチプレックス遺伝子検査を成功させるための指標を得ることを目的とした.方法.手術予定の臨床病期IA3~IIIA期非小細胞肺癌30症例を前向きに検討した.各症例の迅速病理診断用検体を10%ホルマリン,手術検体を20%ホルマリンで固定し,各々をオンコマイン™ Dx Target TestⓇマルチCDxシステム(ODxTT)に提出した.各検体のODxTTの解析成功率,各検体から抽出された核酸濃度を比較した.また,手術検体から抽出された核酸量と検体処理行程に要した時間との相関を評価した.結果.いずれの検体もODxTTの解析成功率は100%であった.抽出された核酸濃度は,DNA,RNA共に手術検体の方が有意に高値であった.核酸量と検体処理行程に要した時間とには有意な相関は認められなかった.結論.20%ホルマリンで固定した肺手術検体でもODxTTは解析成功率100%であり,推奨通りの処理が難しい施設では,その使用が検討され得る.