2024 年 64 巻 1 号 p. 17-21
背景.免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象の中でもぶどう膜炎は稀である.肺癌の網膜転移を思わせるような結節性の病変を伴う片側性のぶどう膜炎を発症時には呈し,ステロイド治療開始から1か月後に反対側にも呈した症例を報告する.症例.59歳女性.右上葉原発肺腺癌の術後再発に対する,カルボプラチン+ペメトレキセド+イピリムマブ+ニボルマブ療法開始後7週で左眼の急激な視力低下を生じた.視神経炎および後部ぶどう膜炎と診断された.光干渉断層計では漿液性網膜剥離と結節状の病変がみられ,腫瘍の網膜転移と免疫学的有害事象によるぶどう膜炎との鑑別が困難であった.視力回復目的に,治療的診断でステロイド治療を開始すると,結節性病変が縮小し,網膜剥離も改善したが,減量中に反対側に病変が出現した.ステロイドの再増量で右眼視力は低下しなかったが,その後も左眼視力は十分には改善せず,左眼遮蔽用眼鏡を使用し,視力は右眼視力に依存した.結論.免疫チェックポイント阻害薬によるぶどう膜炎では,結節性病変を網膜に生じ,診断に難渋することがある.また,視力低下をきたし,生活の質に影響しうる.