2024 年 64 巻 1 号 p. 45-49
背景.顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor:G-CSF)産生腫瘍は予後不良であることが知られている.ROS1融合遺伝子陽性G-CSF産生非小細胞肺癌に対するROS1チロシンキナーゼ阻害薬(ROS1-TKI)の有効性は報告されていない.症例.56歳,男性.急速な進行を認めた縦隔腫瘍,白血球数異常高値で受診.診断の結果低分化肺腺癌(cTXN3M1c,stage IVB)と診断した.遺伝子変異の検索結果を待たずカルボプラチン,パクリタキセル,ベバシズマブ,アテゾリズマブを投与開始したが2コースでprogressive disease(PD)と判断した.状態悪化時に白血球数,血清G-CSFの上昇がみられた.シスプラチン,ぺメトレキセド,ベバシズマブに変更するも,2コースでPDとなった.ROS1融合遺伝子陽性を確認し,エヌトレクチニブを開始後,翌日より呼吸困難の症状は改善し,治療開始1か月半後のCTでは腫瘍の縮小を認めた.投与開始3か月後にPDとなりクリゾチニブへ変更したところ,再度腫瘍の急速な縮小を認めた.結論.G-CSF産生ROS1融合遺伝子陽性肺癌においてROS1-TKIが有効であった.