2024 年 64 巻 2 号 p. 102-106
背景.肺癌の食道への転移は非常に稀である.症例.60歳男性.X年2月から肺腺癌cT1bN3M1a,stage IVAに対して化学療法施行目的に通院中であった.経過中に嚥下困難が出現したが,摂食・嚥下スクリーニング検査やCT検査では嚥下困難の原因となる圧排所見は認めなかった.その後も症状の改善がみられなかったため,嚥下造影検査を行ったところ,中部食道に通過障害を伴う食道狭窄を認めた.胸腹部CT再検では,肺癌の病勢悪化に加えて中部食道粘膜の肥厚あり,上部消化管内視鏡検査で中部食道に粘膜面正常の全周性狭窄を認めた.経過や画像所見から,嚥下障害の原因は肺癌食道転移による食道狭窄と診断した.診断時には既に全身状態は不良で抗がん剤治療の変更や局所療法は困難な状況で,緩和治療の方針となった.結論.肺癌経過中に嚥下困難を生じた場合,圧排所見や嚥下スクリーニング検査で異常を認めなくとも,肺癌食道転移の可能性を考慮して他科や他職種と連携して,精査を行う必要がある.