2024 年 64 巻 6 号 p. 839-847
胸腺上皮性腫瘍は稀な腫瘍であり,主に胸腺腫と胸腺癌に分けられる.胸腺腫と胸腺癌では胸腺腫の方が比較的予後は良好である.進行期や再発した際には薬物治療が主な選択肢となるが,希少疾患であるが故に大規模臨床試験の実施が困難で,標準治療の確立が難しい.これまで,プラチナ製剤を中心とした薬物療法が初回治療として用いられ,二次治療以降は限られたエビデンスの中から薬剤を選択していた.直接比較がない中,real world dataを集積し,最適な治療を探求する試みも行われている.また,最近では,分子標的薬の導入や免疫チェックポイント阻害薬の導入の試みも行われている.さらに,遺伝子異常に基づく治療の開発が期待されており,新しい診断マーカーの発見も行われている.このような試みを通じて,切除不能進行・再発胸腺上皮性腫瘍に対する診断治療が向上し,患者の予後やQOLの改善につながることが期待されている.