肺癌
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当科受診肺癌患者の診断確定迄の経過
松島 敏春原 宏紀安達 倫文岸本 寿男守屋 修川西 正泰矢木 晋川根 博司副島 林造加藤 収
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1986 年 26 巻 4 号 p. 397-402

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抄録

私共が最近10年間に経験した肺癌患者374名の, 肺癌確診前の臨床経過を分析した.その結果, 集団検診が発見動機と何らかのかたちで関与したもの (I群) 83名 (22%), 自覚症状があって医療機関を訪れたもの (II群) 278名 (74%), 他疾患にて受診中に偶然に発見されたもの (III群) 13名 (4%) であった.
肺癌の切除率は, II群においては僅か9%であり, I群では27%であった.I群の中でも, 自覚症状がなく早く診断のついた群 (Ia) では55%の切除率であったのに対し, 自覚症状があって集検を受けた群 (Ib) では10%にすぎず, II群の切除率と差がなかった.
肺癌との確診を得る迄に医療機関で3カ月以上を要した, 所謂doctor'sdelayがI群で8%, II群で22%, 両者合わせて30%であった.
自覚症状があって医療機関を訪れたり, 異常を指摘されたのに放置していたという, 所謂patient'sdelayが64%, doctor'sdelayが30%にみられ, 集検発見, 早期確診のwithout delayは6%にすぎなかった.
このことより, 肺癌を早く発見するためには, 1.大衆の啓蒙, 2.医療機関での診断技術の向上, 3.集検方法の改善 (withoutdelayで切除率が55%であったことによる), の順に重要であることが考えられた.

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© 特定非営利活動法人 日本肺癌学会
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