抄録
症例は61歳男性.健診で胸部異常影を指摘され精査目的で入院した.胸部CTでは上大静脈と気管との間に位置する腫瘤を認め転移リンパ節とも考えられたが, 気管支鏡検査をはじめ全身CT・67Gaシンチグラムなどの全身検索で縦隔以外に病変を認めなかったため縦隔腫瘍の診断のもと開胸術を施行した.各種免疫染色を含む組織学的検討で非定型的カルチノイドと診断されたが, 大部分を占める腫瘍胞巣のなかにリンパ組織がわずかながらみられるものの, 胸腺組織や気管支上皮などの良性上皮性成分は認められなかった.本症例は未だ報告のみられないリンパ節原発例の可能性があり, リンパ節内の微小な異所性上皮組織から発生し, 既存組織を置き換えるように発育・増殖したものと推定した.また, 経過中にみられたリンパ節転移巣の診断には穿刺吸引細胞診が有硝であった.