肺癌
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皮膚の癌性リンパ管症を来した肺腺癌の1剖検例
福岡 和也塩崎 道明古西 満濱田 薫長 澄人成田 亘啓
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1992 年 32 巻 2 号 p. 271-277

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抄録

症例は72歳, 女性.Hugh-Jones III度の労作時呼吸困難を主訴として入院.胸部X線写真にて右胸水貯留を認め, 胸膜生検から癌性胸膜炎 (腺癌) と診断.MMC, OK-432による胸膜癒着術を施行したが, 被包化胸水の遺残と肺の癌性リンパ管症を併発した.その後, 胸腔内カテーテル挿入部に皮下浸潤による腫瘤を触知するとともに右体幹を中心としたびまん性の皮下腫脹と右腋窩リンパ節腫脹が出現, 胸, 腹部CTでは右体幹の皮下組織に広範囲に及ぶ網目状の高吸収域を認めた.これらの所見からびまん性皮下浸潤を疑い, CBDCA, VP-16による全身化学療法を施行するも奏効せず, 呼吸不全に陥り死亡.剖検の病理組織所見から, 本症例にみられたびまん性皮下腫脹の原因は右肺下葉原発の低分化型腺癌の胸膜, 胸壁から皮下組織への直接浸潤と皮膚の癌性リンパ管症によるものと考えられた.

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© 特定非営利活動法人 日本肺癌学会
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