肺癌
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抗癌剤胸腔内投与におけるラット胸膜刺激性の検討
後藤 武近中村 泰三溝渕 一哉有本 太一郎中垣 嘉信藤田 幸久藤井 恒夫岩崎 吉伸中川 雅夫土橋 康成
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1994 年 34 巻 3 号 p. 401-409

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抄録

癌性胸膜炎の治療に際し, 抗癌剤の胸腔内投与がしばしば行われるが, 抗腫瘍効果のみならず強力な胸膜癒着作用が要求される. そこで種々抗癌剤の胸腔内投与時の胸膜癒着作用をラットを用いて肉眼的, 組織学的に検討した. その結果pirarubicin, adriamycin, epirubicinは, それぞれ2mg/kg, 1mg/kg, 2mg/kg以上の投与量で, 2~4週後には臓壁側胸膜は強度に癒着しており, 中皮細胞の破壊, fibrin析出が著明であった. cisplatin, carboplatinの白金化合物も, それぞれ4mg/kg, 20mg/kgの投与量で3~4週後には比較的強度の胸膜癒着を認めた. etoposideは, 16mg/kg投与でも, 胸膜の組織学的変化は認めるが, 肉眼的な癒着はほとんど認めないか, 認めても極めて軽度であった. 以上の検討から, pirarubicin, adriamycin, epirubicinのanthracycline系薬剤は, cisplatin, carboplatinの白金化合物やetoposideよりも, 強力な胸膜癒着作用を有すると考えられた.

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© 特定非営利活動法人 日本肺癌学会
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