肺癌および肺気腫症例の入院患者について既往歴, 家族歴を比較検討した. 気腫群は呼吸不全などのため入院を要した症例であり, 肺癌群より高齢, 喫煙指数高値であった. 既往歴では虚血性心疾患が肺癌群で有意に多かった. 消化性潰瘍の既往は両群に頻度の差はないが罹患年齢分布に相違がみられ, 肺癌群では50才に, 肺気腫群では40才台と60~70才の2相性にピークがみられた. 家族歴では良性疾患についての両群間の差はみられなかったが, 肺癌群には肺気腫群の約2倍の頻度で癌患者がみられた. 肺癌家族にみられる癌の種類は本邦における一般的な癌頻度と大差なかった. この傾向は血縁者のみでなく配偶者にもみられた. 喫煙は肺癌の危険因子とされるが, 逆に重喫煙にもかかわらず肺癌を発症していない者は肺癌発症に対する感受性が低下している可能性も否定できない. 対象とした肺気腫群はこのモデル例と考えられ, 上記の比較は肺癌危険因子を探る上で示唆的と考える.