肺癌
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36 巻, 6 号
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  • Thin-section CT画像と病理所見の対比
    山田 耕三, 加藤 雄二, 尾下 文浩, 野村 郁男, 野田 和正, 山形 達史, 田尻 道彦, 石橋 信, 亀田 陽一, 森山 紀之
    1996 年36 巻6 号 p. 721-730
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺癌の胸壁浸潤診断の精度を高める目的で, 通常CT画像および造影thin-section CT画像とその病理所見を対比検討した. 対象は最近約3年間に神奈川県立がんセンターにおいて切除された原発性肺癌240例の中で, 通常CT画像で胸壁浸潤が疑われた33例である. 使用したCT機種は東芝製TCT-900S, HELIXであり, 術前2週間以内に60mlの造影剤で通常CTを撮影した後, 関心領域をhelical CTで40mlの造影剤を用い撮影した. 再構成した画像は10mm厚, 10mm間隔の通常CT画像と2mm厚, 2mm間隔のthin-section CT画像であり, WL40, WW400の縦隔条件画像と病理所見を対比した. 通常CT画像での胸壁浸潤診断の正診率は48%であったが, thin-section CT画像を併用するとそれは82%に上昇した. 以上より, 通常造影CT画像に造影thin-section CT画像を併用することは, より正確な肺癌のT因子診断に寄与できることが示唆された.
  • 淀縄 聡, 三井 清文, 赤荻 栄一, 鬼塚 正孝, 石川 成美, 佐藤 幸夫, 台 勇一, 木下 朋雄, 友安 信, 三井 利夫
    1996 年36 巻6 号 p. 731-737
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    癌性心嚢炎による心タンポナーデを発症した原発性肺癌36例に対し, 当科で考案した胸骨穿孔下心膜切開による心嚢ドレナージを施行しその治療成績を検討した. 心タンポナーデ発症時の随伴症状は癌性リンパ管症, 癌性胸膜炎, 遠隔転移, SVC症候群などで, 進行例が多かった. 排液のみは17例, 局所注入療法は19例に行った. ドレーン抜去例は30例でドレナージ期間は3日から30日まで平均13.4日であった. ドレナージ後7例に化学療法, 放射線療法を行い, 30例中27例はドレーン抜去後30日以上心嚢液の再貯留, 心タンポナーデの再発を認めず, また13例は一時退院が可能であった. 合併症は術中出血の1例であった. 胸骨穿孔下心嚢ドレナージは心タンポナーデを安全に, かつ速やかに改善させ, 患者のQOLを向上させる優れた方法と考えられた. 予後は中間生存期間78日と不良であるが, 死因のほとんどは肺癌進行による呼吸不全であった.
  • 中原 保治, 望月 吉郎, 中原 由紀子, 河村 哲治
    1996 年36 巻6 号 p. 739-744
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺癌および肺気腫症例の入院患者について既往歴, 家族歴を比較検討した. 気腫群は呼吸不全などのため入院を要した症例であり, 肺癌群より高齢, 喫煙指数高値であった. 既往歴では虚血性心疾患が肺癌群で有意に多かった. 消化性潰瘍の既往は両群に頻度の差はないが罹患年齢分布に相違がみられ, 肺癌群では50才に, 肺気腫群では40才台と60~70才の2相性にピークがみられた. 家族歴では良性疾患についての両群間の差はみられなかったが, 肺癌群には肺気腫群の約2倍の頻度で癌患者がみられた. 肺癌家族にみられる癌の種類は本邦における一般的な癌頻度と大差なかった. この傾向は血縁者のみでなく配偶者にもみられた. 喫煙は肺癌の危険因子とされるが, 逆に重喫煙にもかかわらず肺癌を発症していない者は肺癌発症に対する感受性が低下している可能性も否定できない. 対象とした肺気腫群はこのモデル例と考えられ, 上記の比較は肺癌危険因子を探る上で示唆的と考える.
  • 川波 祥子, 今田 肇, 寺嶋 廣美, 中田 肇
    1996 年36 巻6 号 p. 745-752
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1980年から1995年までに放射線治療を施行した上大静脈症候群38例について検討した. 原因はいずれも悪性腫瘍によるもので, 肺癌が28例 (73.7%) と最も多かった. 治療は通常分割照射で20~70Gy照射し, 30例 (78.9%) で臨床症状の改善が得られた. また, 症状改善は治療開始から平均1.7±0.9週 (3日~4週) と比較的早期から認められ, これに伴いPSも50%の症例で改善した. 全症例の中間生存期間は6.6ヵ月であり胸腺腫の症例以外は長期の生存例は少なかった.しかし生存中にSVC症候群の再発を見たのは1例のみであり, 上大静脈症候群に対する放射線治療はQOLの向上に有用であると考えられた.
  • 肺癌と血痰の関連について
    河村 哲治, 望月 吉郎, 中原 保治, 中原 由紀子, 河南 里江子, 露口 一成, 桂 榮孝
    1996 年36 巻6 号 p. 753-757
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1990年から1992年までの3年間に, 血痰を訴え当院を受診した患者240例を対象に, 全例に胸部X線撮影, 喀痰細胞診を, 185例に気管支鏡検査を施行し, 血痰の原因を検索した. 240例中, 肺癌54例, 喉頭癌1例, 陳旧性肺結核16例, 気管支拡張症11例, 急性気管支炎11例, 上気道炎6例, 中葉症候群6例, 気管支喘息4例, 非定型抗酸菌症4例, びまん性汎細気管支炎3例, 肺炎2例, 慢性気管支炎2例, 肺結核2例, その他4例, 診断確定できなかったもの114例であった. 血痰患者のうち約4分の1が肺癌であり, 肺癌を早期発見するためにも注意深い日常診療, 特に積極的な気管支鏡検査が必要であると思われた.
  • 小池 輝明, 寺島 雅範, 滝沢 恒世, 青木 正, 栗田 雄三, 横山 晶, 三間 聡, 塚田 裕子, 三沢 博人
    1996 年36 巻6 号 p. 759-764
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    新潟県肺癌検診システムの変遷より, 肺癌検診開始前の1977年以前を (1) 期, モデル地区検診の1978-1983年を (2) 期, 全県統一検診方式の1984-1987年を (3) 期, 老健法検診開始以降の1988-1994年を (4) 期とした4年代に分け, 当施設で切除した原発性肺癌1592例の治療成績を検討した. 術後5生率は (1) 期34.0%,(2) 期50.4%,(3) 期54.4%,(4) 期57.8%と年代と共に上昇し, その主たる原因は病理1期症例, 特に肺野末梢部最大腫瘍径2.0cm以下症例の増加によると推察された. 発見動機からみると, 小型肺癌の増加は肺癌検診の普及効果と考えられた. 病期の進んでいない症例の増加に伴い, 当施設での肺癌入院症例に対する手術施行率は57.1%に及び, 外科治療成績から換算した肺癌全入院症例の5生率は検診施行前10%以下であったが, 近年には30%を凌駕した.
  • 藤兼 俊明, 藤田 結花, 辻 忠克, 松本 博之, 佐々木 信博, 清水 哲雄, 坂井 英一
    1996 年36 巻6 号 p. 765-774
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    女性肺癌の臨床像について, とくに喫煙歴に注目して男性と比較検討した. 女性の喫煙率は男性の1/3以下, 平均喫煙指数も1/2以下であった. 女性では男性と比較して腺癌, 無自覚症状者, 臨床病期1期, IV期, PS0, 4が有意に多く, 検診発見者が多い傾向にあった. しかし, 喫煙歴別では, 非喫煙女性で非喫煙男性に比較してPS0が有意に多かったほかに男女間に有意差はなかった. また, 喫煙女性は非喫煙女性と比較し自覚症状発見者, 有自覚症状者が有意に多く, IV期, PS4が多い傾向にあった. 予後は, 全症例およびおもな予後因子で層別しても男女間に有意差はなかったが, 腺癌のIV期では女性の予後が有意に良好であった. 女性肺癌の臨床像の特徴は男性と比較して喫煙歴が少ないことによる影響が大きいと考えられた. また, 喫煙歴の有無は男性と比較して女性でより大きく臨床像に影響を与えていた.
  • 中村 浩明
    1996 年36 巻6 号 p. 775-783
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近年の “CT発見肺癌” の増加は, 微小病変でさえも可視し, リアルタイムで肺生検が可能なCT-fluoroscopyという新装置の開発を導いた. 本装置は今後これらの症例の確定診断のため広く普及していくものと考えられるが, 著者はその有用性と問題点を検討した. 今回, 21Gの生検針を用いてCT透視下に経皮的肺生検を行い, 同時にTLD (thermoluminescence dosimeter) により術者の手指被曝を測定した. 結果: 本装置使用により径4mm程度の微小病変まで命中させることが可能で, 7例中5例に確定診断がなされ, 合併症として4例に気胸を認めたが処置を要するものはなかった. 術者の利き手の中指, 手背, 前腕で被曝量を測定した. 一例で術者の利き腕中指で, 最高34m SVの被曝量を示した. 以上, 小数例の検討ではあるが本法は微小病変の診断には極めて有用で重大な合併症は認めない. しかし, 術者の手指被爆が予想を超えて多いことより今後その対策が重要な課題になると思われる.
  • 陳 炎, 斎藤 泰紀, 佐藤 雅美, 佐川 元保, 高橋 博人, 遠藤 千顕, 桜田 晃, 相川 広一, 薄田 勝男, 藤村 重文
    1996 年36 巻6 号 p. 785-790
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    原発性非小細胞肺癌におけるBcl-2蛋白, アポトーシスおよびp53蛋白の発現について免疫組織化学的に検討した. Bcl-2の陽性率は, 扁平上皮癌24%, 腺癌17%, 大細胞癌17%, Apop Tagによる染色の陽性率は扁平上皮癌35%, 腺癌27%, 大細胞癌25%, p53の陽性率は扁平上皮癌42%, 腺癌20%, 大細胞癌42%であり, いずれにおいても扁平上皮癌で陽性率が高い傾向があった.Bcl-2の発現陽性群は3年生存率95.5%で陰性群の81.4%に比し生存率が高い傾向にあり, 予 後因子となりうる可能性が示唆された. また病理病期ではStageの早いものでBcl-2の陽性率が高い傾向があった. Bcl-2とp53の関係ではBcl-2が陽性の場合にはp53の陽性率が高い傾向があった. Bcl-2およびp53両方が陽性の場合にはApop Tagの陽性率が有意に高かった (p=0.018).
  • 長沢 正樹, 塚本 東明, 山田 敬子, 佐藤 徹, 成毛 佳樹
    1996 年36 巻6 号 p. 791-796
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    気管支樹に沿って気管支内腔を進展する比較的稀な肺腫瘍を3例経験した. 症例1は56歳男性. 職場検診で左肺上葉の異常影を指摘され来院. 気管支鏡で上区支を閉塞するポリープ状の腫瘍を認め, 左上葉切除を施行. 腫瘍は左B3の気管支内腔を圧排性に発育しており, 定型気管支カルチノイドであった. 症例2は51歳男性. 人間ドックで右肺S2の無気肺様陰影を指摘され来院.内視鏡で右B2bを閉塞するポリープ状の腫瘍を認め, 右上葉切除を行った. 右B2b内腔を鋳型に充填するように発育した腫瘍を認め, 腎癌の転移であった. 症例3は62歳男性. 血痰を主訴に来院. 胸部写真で左上区に手指状の陰影を認めた. 気管支鏡では上区支を閉塞するポリープ状の腫瘍を認めた. 切除肺では上区支からB1+2, B3の気管支内腔を発育する腫瘍で, 癌肉腫であった. 気管支樹に沿って気管支内腔を進展する肺腫瘍の種類は多く, 転移性肺腫瘍の可能性もあるため日常診療上注意が必要である.
  • 小林 孝一郎, 木元 春生, 前田 昭治, 北川 正信
    1996 年36 巻6 号 p. 797-801
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    最近経験した若年者肺癌の2切除例を報告する. 症例1は34歳, 男性. 発熱, 咳嗽を主訴として発病し, 肺炎として抗生剤治療後無気肺は経過観察されていたが, 15カ月後から咳嗽出現し, 気管支鏡検査にて右上葉気管支入口部を閉塞しポリープ状に発育する腫瘍を認めた. 定型的カルチノイドの診断にて, 右上葉切除を行った. 切除断端は陰性で, 郭清したリンパ節に転移はなく, 術後13カ月再発なく経過している. 症例2は25歳女性. 職場検診にて異常陰影を指摘され, 胸部CTにて左S1+2に径1cm大の辺縁が比較的明瞭でやや分葉状の腫瘤影を認めた. 喀痰, Brushing, BALともに細胞診陰性であったが, 開胸肺生検にて腺癌と診断し, 左上葉切除を行った. 郭清したリンパ節に転移はなく, 術後12カ月再発なく経過している. 若年者肺癌の問題点を示唆する典型的な症例であり, 文献的考察を加えて報告する.
  • 平野 博嗣, 指方 輝正, 坪田 紀明, 高田 佳木, 大林 加代子, 加堂 哲治
    1996 年36 巻6 号 p. 803-807
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 咳嗽, 血疾を自覚, 改善傾向がないため, 近医を受診し, 胸部異常陰影を指摘され, 経気管支鏡的擦過細胞診にて悪性所見が得られた. 加療目的にて当センター紹介入院となった. 右中下葉切除術及び縦隔 (気管分岐部, 肺靱帯) リンパ節および肺門 (主気管支周囲, 葉気管支間) リンパ節郭清を施行したところ, 切除肺において腫瘍は右中間幹に位置し35×30×20mm大であり, 組織学的には大小不同のある楕円形の核をもつ紡錘形細胞と異型性のある核をもつ多角形の細胞で構成されていた. 免疫組織学的にはα-smooth-muscleactinが陽性, Vimentinが弱陽性であった. 電子顕微鏡的には腫瘍細胞の細胞質にdensepatchを伴ったmyofilamentが観察された. 以上の結果から平滑筋肉腫と診断した. 全身検索を行ったが他の臓器の異常は発見できず, 術後1年6カ月が経過したが, 再発・転移の徴候はなく肺原発の平滑筋肉腫と考えた.
  • 渡辺 進一郎, 中村 康孝, 竹内 一雄, 清水 淳三, 細 正博, 野口 正人
    1996 年36 巻6 号 p. 809-814
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    63歳の男性が咳嗽にて来院した. 胸部X線およびCTにて右中葉に腫瘤陰影, 縦隔リンパ節の腫脹を認めた. 血清CEAが194.6ng/ml, CA19-9が4448U/mlと上昇していた. TIN3M0の肺癌と診断し, 右中葉切除術, 縦隔リンパ節郭清を施行した. 病理組織では乳頭型腺癌と診断された. CEAおよびCA19-9免疫染色にて癌細胞は染色され, 本症例はCEAおよびCA19-9産生腫瘍と考えられた. 術後1カ月後, 60Gyの放射線療法, 温熱療法が行われ, さらに経口にてUFTの投与を行った. 術後4カ月後血清CEAおよびCA19-9は正常値となった.
  • 増田 亮, 田中 勲, 井上 雅晴, 古畑 善章, 武村 民子
    1996 年36 巻6 号 p. 815-819
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    胸壁への浸潤が疑われ悪性腫瘍との鑑別が極めて困難であった肺炎症性偽腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は67歳, 男性, 胸部レントゲン撮影で右上肺野に空洞を伴った腫瘤影が認められ, 陰影が増大してきたため入院となった. 肺原発悪性腫瘍の診断で開胸した. 右上葉切除術ならびに胸壁合併切除を施行した. 腫瘍の大きさは48×54mm, 固く胸壁に接しており, 浸潤していると考えられた. 腫瘍は組織学的にほとんどを紡錘形細胞が占め, 密に配列しており, 紡錘形細胞の間にリンパ球, 組織球, 形質細胞の浸潤が認められた. 免疫組織学的検索では, PCNAは腫瘍中心部分と胸壁浸潤部分で多くの細胞が陽性を示したが, P53はどちらの部位でも陰性であった. 腫瘍細胞のflow cytometryによるDNAパターンはdiploidパターンを示した. 胸壁に浸潤し悪性腫瘍との鑑別が困難であった肺炎症性偽腫瘍と診断した. 術後3年を経過したが再発の兆候なく良好に経過している.
  • 加藤 知子, 大野 彰二, 北村 諭, 山口 勉, 蘇原 泰則, 斉藤 建
    1996 年36 巻6 号 p. 821-825
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 70歳男性. リウマチ性肺臓炎として経過観察中, 左S9にcoin lesionを指摘された. 同部位からの経胸壁超音波ガイド下吸引細胞診で悪性細胞を認めた. 左下葉切除術を行い, large cell neuroendocrine carcinoma, pT2N0M0, Stagelと診断した. 静脈浸潤を認めたため, 術後化学療法を施行した. リウマチ性肺臓炎とLCNECとの合併は稀と考え報告した.
  • 田中 康一, 三浦 隆, 武野 慎祐, 河野 洋三, 内田 雄三, 永井 寛之
    1996 年36 巻6 号 p. 827-831
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    鎖骨上窩リンパ節を触知した左上葉肺癌に対し切除を行い, 6年以上無再発生存している症例を経験したので報告する. 症例は52歳, 女性. 胆石症の術前検査で偶然に発見. 胸部X線写真で左上葉の縦隔に接し腫瘤影があり, CEAが27.4ng/m1と上昇, また, 左鎖骨上窩に転移と思われる固いリンパ節が触知された. cT3N3γM0StageIIIB肺癌の診断で, 胸骨正中切開に, 頸部襟状切開, 前側方開胸を加え手術を施行した. 肺門, 縦隔にも明らかなリンパ節転移があり, 肺動脈の管状切除と伴に上葉を切除し, 縦隔, 頸部郭清も十分に行った. 術後化学療法を1クール行い退院. 以後はUFTとVP16の経口投与を行ったが, 6年以上無再発生存中である. 鎖骨上窩リンパ節転移を触知し得る肺癌でも一概に根治手術の適応から除外すべきでないと考えた.
  • 小山 茂, 一由 武男, 神林 隆幸, 岡嵜 洋一
    1996 年36 巻6 号 p. 833-838
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例1: 67歳, 男性. 右下葉の原発性肺癌 (扁平上皮癌, T4N2M0, IIIB期) にて, cisplatin, etoposideによる化学療法を2クール (効果判定はPartial Response), 胸部放射線療法 (総線量54Gy) を施行したが, 胸部X線写真上, 両側性間質影が出現し, ステロイド剤の投与にても改善なく呼吸不全のため永眠した. 症例2: 74歳, 男性. 左下葉の原発性肺癌 (腺癌, T3N2M0, IIIA期) にて胸部放射線療法を施行したが, 総線量56Gyの照射にて胸部X線写真上, 両側性間質影が出現し, ステロイド剤の投与にても改善せず呼吸不全のため永眠した. 2例とも死後, 開胸下に照射野対側の肺の一部を採取した. 病理学的には硝子膜の形成を伴う肺胞壁の肥厚がみられ, 細菌やウイルスの感染および癌性リンパ管症の所見はなく, 放射線治療に関連した急性間質性肺炎と考えられた. 発症の予測は困難であったが, 発熱は重要な所見と思われた.
  • 1996 年36 巻6 号 p. 839-860
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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