肺癌
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著明な気管支粘膜下リンパ管侵襲を示した末梢型小型肺腺癌の1例
辻 興平野 隆河手 典彦小中 千守海老原 善郎加藤 治文
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1998 年 38 巻 3 号 p. 255-260

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抄録

52歳男性. X線画像診断, X線透視下擦過細胞診にて右上葉原発小型肺腺癌 (cTIN0M0-Stage I A) と診断され, 手術目的にて外科紹介となる.術前気管支鏡検査にて気管分岐部から右上中間幹分岐部, 左上下幹分岐部にかけて粘膜の発赤, 浮腫状変化を認め, 同部生検の結果, 粘膜下リンパ管内の癌細胞侵襲が認められ, 手術適応無しと判断された。細胞間接着因子E-カドヘリン及び細胞膜裏打ちタンパク (α-カテニン, β-カテニン, プラコグロビン) の発現を免疫組織化学染色にて評価したところ, 本症例がE-カドヘリンを介する細胞間接着能低下症例であることが推測された (裏打ちタンパク全ての発現低下を認めた). 擦過細胞像は孤立細胞が目立ち, 細胞集塊は重積性に乏しく, 細胞間の接着面が狭く, 細胞間結合性に乏しかった。末梢型小型肺腺癌であっても術前気管支内視鏡所見を慎重に検討する必要があると考える.

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