症例は73歳男性. 健康診断の胸部X線写真にて気腫肺の診断で経過観察中であったが, 右上肺野に腫瘤状陰影を指摘された. その後の胸部CTでは右上葉およびS6の多数の嚢胞とともに右肺S2領域に存在する辺縁明瞭な充実性腫瘤を認められた. この胸部CTを以前のものと比較したところ, 2ヵ所の肺嚢胞が新たに充実性腫瘤に置き換わっていた. 腫瘤は嚢胞壁より発生し, 嚢胞の内腔を満たすように発育していったものであると思われた. 比較的急速に腫瘤が発育したことより悪性を疑い開胸手術を施行した. 手術所見は, 嚢胞周囲に炎症性と思われる強固な胸膜癒着を認め, 術中迅速診断にて嚢胞内に壊死物質と扁平上皮癌を認めたため右上葉切除 (R2a) を行った. 肺嚢胞性疾患患者に対しては肺癌の合併を念頭に置き, CTを中心とした画像診断による定期的な経過観察を行い, ひとたび肺癌を疑った場合には開胸肺生検をはじめとした積極的な検索が必要であると思われた.