1998 年 38 巻 7 号 p. 855-862
胸腺腫瘍の近接臓器への浸潤の有無および内部構造について, 通常の造影CT画像とthinsectionCT (TS-CT) 画像を用いて検討した.対象は最近5年間に当センターにて切除され, 確定診断がついた浸潤性胸腺腫瘍10例, 非浸潤性胸腺腫瘍6例, 胸腺癌4例である.個々の症例について画像所見と病理所見をprospectiveに比較検討をした.周辺組織への浸潤を指摘できたものは, 通常CT画像では14例中3例 (21%) であったが, TS-CT画像では14例中12例 (86%) であった.画像的に浸潤を指摘できなかった2例は, 病理学的には顕微鏡的に腫瘍が周辺の脂肪組織へわずかに浸潤していた例であった.病変の内部構造に関しては, 病理学的に隔壁の存在を認めた16例において, 通常CT画像では3例 (19%) に認めたが, TS-CT画像上では12例 (75%) であった.以上より, 胸腺腫瘍に対するTSCT画像は, 質的診断やその拡がり診断に関して有用な情報を与え得る検査であると考えられた