1998 年 38 巻 7 号 p. 863-870
術前針生検にて胸腺腫と診断された胸腺癌を2例経験した.いずれの症例も, 針生検HE標本では, 軽度の細胞異型を認める上皮性腫瘍で, 通常胸腺癌には見られないリンパ球浸潤を伴っており, atypical thymomaと診断されたが, 術後病理HE標本では明らかな扁平上皮癌であった.抗bc1-2およびMIB-1抗体を用いて, これら2症例の針生検標本の免疫組織染色を行った。対照として, 術前針生検標本の検討可能な胸腺腫4例を用いた.抗bc1-2抗体により, 胸腺癌では細胞質が強く染色されたのに対し, 胸腺腫のbc1-2染色はほとんどみられなかった.MIB-1抗体による染色指数は胸腺腫1.0~3.6%, 胸腺癌14.0, 14.6%と胸腺癌で高値を示した.術前針生検の小さな切片では, 胸腺腫と胸腺癌との鑑別が困難な事があり, bc1-2やMIB-1の染色が両者の鑑別の補助となりうることが示唆された