日本ハンセン病学会雑誌
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原著
在宅回復者に発症したハンセン病関連疾患2症例とこれらに関連した医療の課題
石田 裕井上 太郎土屋 一郎前田 光美平野 昭
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2010 年 79 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

 1996年のらい予防法の廃止に伴い、ハンセン病療養所からの回復者の退所はさらに進んだ。2008年、当施設でハンセン病関連疾患の診断時期が種々の理由で遅れたと考えられる症例を2例経験した。1例は60才の男性で慢性足底潰瘍から発生した皮膚癌の症例、もう1例は69才の女性で再発の症例であった。2例とも、症状がかなり進行した後に受診していた。これは社会復帰した回復者に対するハンセン病関連疾患の定期的な検診の機会がないことや、回復者自身が一般医療施設へ受診することに躊躇したことが原因と考えられる。これまでハンセン病関連疾患の医療を中心的に担ってきたハンセン病療養所は終焉を迎えようとしている。回復者に対する後遺症障害の管理や悪化予防、再発やらい反応の早期発見のために、安心して受診できる医療サービスの提供を、一般医療施設で行うことは喫緊の課題と考えられる。

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© 2010 日本ハンセン病学会
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