抄録
ハイチ、インドネシア、パキスタン、フィリピン及び日本国内のハンセン病患者から分離した88株のらい菌を用いて、代表的なハンセン病治療薬であるリファンピシン、オフロキサシン及びダプソンの薬剤耐性に関与している遺伝子、すなわち、rpoB、gyrAやfolP遺伝子の塩基配列を決定し、それらの変異を解析した。これらの3種類の遺伝子中には、結核菌や大腸菌で耐性に関与することが報告されているコドン変異が観察された。11例で2つの遺伝子に変異が、さらに、2例では、3遺伝子のすべてに変異が存在し、ハンセン病治療薬の2剤あるいは3剤に対して耐性であることが示唆された。このように、多剤耐性らい菌が既に出現していることが明らかになった。世界保健機関(WHO)は多剤耐性らい菌の出現に対して、積極的な対策や啓発活動をしていない。ハンセン病制圧に薬剤耐性らい菌の出現は、大きな課題となることが想定される。そのため、本研究のような迅速な遺伝子変異検出方法の開発や実用化は、薬剤耐性らい菌の発生動向や新規治療薬開発等に寄与するものと考えられる。