ヒトと動物の関係学会誌
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研究論文
瀬戸内海のスナメリの生態について ―鯨類とヒトとの関係の意外な一面―
真弥 門多 風 伊藤直樹 亀崎
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 2025 巻 70 号 p. 70-77

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抄録
スナメリ(Neophocaena asiaeorientalis)はアジアの沿岸に生息し、地域ごとに繁殖期が異なる小型のハクジラ類である。岡山県瀬戸内市邑久町の瀬戸内海では、定置網漁の際に、スナメリが漁で投棄される魚を目当てに現れることが確認されている。その実態を明らかにするため、2021年6月末から2023 年11月の間、62 回の現地調査を実施した。調査は漁の時間であるAM5:00−7:30 に行われた。ドローンと海中カメラを使用し、スナメリの頭数と海中の様子を記録した。ほぼ全ての調査で、スナメリは漁船の近くに現れ、投棄された魚を獲っていた。比較の参照として、漁と異なる時間に漁港から船を出したが、スナメリはほとんど現れず、彼らが漁の時間を学習している可能性が示唆された。これらの結果から、当該地域のスナメリは、定置網漁を利用し、漁船から捨てられる魚を採餌していることが分かった。その一方で、スナメリはヒトに慣れることがなく、孤独でシャイな性質があると予測できた。これは、鯨類とヒトとの関係の新たな一面であると言える。
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