高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
文の音読において助詞の探索が見られた小児失語の1症例
渡辺 真澄筧 一彦種村 純
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2004 年 24 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

仮名1文字の音読は可能だが,文中の助詞を読み誤り,探索を行う非流暢型小児失語1例に, 単語, 句, 文の音読検査を行った。仮名単語では頻度効果と同音疑似語効果が現れ, 読み誤りは視覚性錯読が優勢であった。仮名非語の音読は不可能で語彙性効果が見られた。名詞句の音読では, 誤った用法の助詞を正しくして読む傾向があった。漢字語を含む文の音読では, 名詞が助詞, 述語より成績が良好な, 品詞効果が現れた。これらの現象は軽度の深層失読か音韻性失読に相当し, 音韻の障害により生じたと考えられる。誤読時や探索時に現れる助詞の発話回数と出現頻度 (NTTデータベース) には正の相関があり, 高頻度のものほど多く現れる傾向があった。これは, より高頻度の助詞ほど音韻表象が効率よく活性化されるためと解釈できる。

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© 2004 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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