音声生成機構研究で培われた知見や観測技術を,発語失行を含む発話障害の研究や臨床に役立てることができるか。この問題に関連する話題を提供した。まず,音声生成過程を「Phonological level」,「Phonetic level」,「Articulatory level」の3 レベルに分け,すでに提案されている対応モデルを紹介した。各レベルに機序を持つ発話の障害について,これらのモデルを用いた説明を試みた。その上で各レベルの障害を聴覚印象のみで分離することの難しさを指摘した。最後に,診断精度向上に寄与すると思われる発話動態の観測技術や脳機能イメージング技術を紹介した。発話障害の理解を深めるためには,観測技術の開発,理論的なモデル構築,臨床データの蓄積の協調的進展が必要である。